中国のヘッジファンド業界で名を馳せる梁文峰(リャン・ウェンフォン)が創業したDeepSeek。同社が開発したAIは、ChatGPTの競合として注目されており、米国でのダウンロード数ランキングで1位を獲得しています。米国による関連技術の輸出規制が続く中、比較的無名の企業がどのようにして先進的なAI製品を実現できたのか、議論を呼んでいます。
市場分析プラットフォームであるSensor Tower(サンフランシスコに拠点)によれば、「DeepSeek-AI Assistant」という独自のAIモデルを搭載したアプリは現在、中国と米国のApple App Storeで無料アプリランキングのトップに立っています。このチャットボットは、ChatGPTと同様に、質問への回答、文章作成、情報収集の支援など、幅広いタスクをこなせるのが特徴です。
このアプリが急速に注目を集めた理由の一つは、開発元である杭州を拠点とするDeepSeekが、シリコンバレーを驚かせる技術的進歩を遂げた点にあります。OpenAIが開発にかけたコストを大幅に下回る予算で、さらに米国当局による中国への半導体販売制限を受ける中、性能の低いチップを用いて高度なAIを開発したとみられているのです。
カリフォルニア大学バークレー校などの研究者が運営する評価プラットフォーム「Chatbot Arena」によると、今月初めにリリースされた「DeepSeek R1」モデルは、ユーザー投票で世界第4位の人気AIモデルとして評価されています。同プラットフォームのデータでは、このモデルは昨年12月に公開されたOpenAIの「o1」モデルを上回る評価を得ています。
DeepSeekは、R1モデルの発表に際し、「複雑な推論や高度な数学的問題を解決する能力を備え、OpenAIのo1モデルに匹敵する性能を持つ」と説明しました。さらに、創業者の梁文峰(リャン・ウェンフォン)は先週、AIに関する政府会議の場で、李強(リー・チャン)首相と会談したことが報じられています。
DeepSeek R1は、これまで目にした中でも最も驚くべきブレークスルーの1つ
同社は追加の取材要請には応じていません。2023年に設立されたDeepSeekは、外部からの出資が確認されていないにもかかわらず、その初期の成功がシリコンバレーに大きな衝撃を与えています。著名投資家のマーク・アンドリーセンは、米国時間1月24日にX(旧ツイッター)で「DeepSeek R1は、これまで見た中でも最も驚異的なブレークスルーの一つです。さらに、オープンソースとして世界に大きな価値を提供しています」とコメントしました。
また、ワシントンD.C.を拠点とするアドバイザリー企業DGA-Albright Stonebridge Groupのパートナー、ポール・トリオロは電子メールで「DeepSeekのモデルは、OpenAIに匹敵する最高水準の性能を備えていると見なされています」と述べています。
「DeepSeek」創業者は?
同社の急成長を支えているのは、最先端技術に強い情熱を持つ梁文峰(リャン・ウェンフォン)という隠遁型ヘッジファンド経営者です。1985年に広東省で生まれた梁は、小学校教師を務める父親のもとで育ちました。地元メディアによると、彼は投資家としてキャリアをスタートさせ、2008年に杭州の浙江大学でコンピュータビジョンに関する修士号を取得後、株式取引におけるAIの活用研究に取り組み始めたとされています。
梁文峰(リャン・ウェンフォン)は、2015年にヘッジファンド「High-Flyer Quant」を共同設立し、翌年からアルゴリズムを活用した投資機会の分析を開始しました。同社のウェブサイトによると、2017年にはHigh-Flyer Quantの投資運用のほぼすべてがAIによって行われるようになっていました。
2019年までに、High-Flyer Quantの運用資産(AUM)は100億元(約2133億9000万円)に達し、その成功が注目を集めました。地元メディアが中国のHithink Flush Informationのデータを引用したところによると、2024年時点でリターンが200%を超えるファンドも存在するとされています。
しかし、梁が真に情熱を注いでいるのは、フロンティア技術の探求です。2023年の希少なインタビューで、彼は地元メディア36Krに「研究とイノベーションを追求したい」と語っています。High-Flyer Quantの運営に加え、梁はワシントンの輸出規制が施行される前からエヌビディアのチップを積極的に購入し、ヘッジファンドで得たリターンをAIモデルのトレーニングに再投資していたことが明らかになっています。
「DeepSeek」2023年11月には最初のAIモデルをローンチ
こうした流れの中で、2023年にDeepSeekが設立されました。企業情報サービス「Qichacha」によると、同社は外部からの出資を受けず、自己資金で運営されています。また、同年11月に最初のAIモデルをリリースしています。
清華大学情報科学部の助教授である許華哲(シュイ・ホアヂェ)は、WeChatを通じて「DeepSeekの革新の一部は『Mixture of Experts(MoE)』(専門家の組み合わせ)と呼ばれる技術によるものだ」と述べています。この技術は、多数の小規模なAIモデルを同時に学習させ、ユーザーへの応答時に最適なモデルの出力を組み合わせる手法です。
許助教授によれば、MoE技術を活用することで、高性能チップや大規模なデータの必要性が軽減され、DeepSeekはコスト削減に成功しているとみられます。同社は、一部のAIモデルの学習費用がわずか560万ドル(約8億6800万円)に抑えられたと主張しており、これはOpenAIが投入した額と比較して最大95%のコスト削減に相当するとしています。
その結果、DeepSeekはユーザーに対する利用料金を低く抑えています。AIアシスタント機能は無料で利用可能ですが、開発者が基盤モデルにアクセスして自社製品を構築する場合には課金される仕組みです。具体的には、DeepSeek R1は100万トークンあたり14セント(約21.7円)を課金しており、これに対してOpenAIは7.50ドル(約1162円)を請求しています。
北京を拠点とするブティック投資銀行Chanson & Co.のマネージングディレクターである沈萌(シェン・モン)は、WeChatで「DeepSeekは、多くの中国製モデルが模倣に留まる中、独自の技術路線を切り開いた存在です。これは、中国のチップ開発企業に対しても大きな期待をもたらしています」とコメントしています。
さらに沈氏は、「DeepSeekのトレーニングは、膨大な計算能力に大きく依存していないため、エヌビディア製GPUを大量に使用する必要がありません」と指摘しています。「これはつまり、中国製チップがさらなる成長の可能性を広げたことを意味します」と述べています。
専門家の反応は?
中国企業は、高性能な半導体の入手が困難な状況下で、計算資源を節約するAI開発技術を磨いてきました。今回、R-1が低コストでOPENAIのo1に匹敵する性能を実現したことで話題となりましたが、DeepSeekは前モデルできわめて低い運用コストに実現したことで中国で話題となりました。
AIは開発時の学習、運用時の推論、両方でコストがかかりますが、Deepseekはその方法で大きなブレイクスルーを実現しています。同社はオープンソースでモデルを公開してますし、開発手法についてもかなり詳細に公開しています。他社のAIモデルも新たな技術を取り入れ、急激に進化することが期待されます。
中華製AIというのでセンシティブな情報は与えないようにしながらテストを繰り返している。通常のサーチのような使い方ではなく、『推論』する思考を尋ねるととてもユニークな答えだ。
まず、日本語で問うと、インプットメソッドの手法で途中で改行で送信されたりするので、事前に『相談事項』を明確にして『思考』の手順を訪ねてみるとよいだろう。推論プロセスは『中国語』で現れるが、アウトプットは日本語となる。
何よりもこのレベルの出力が『無料』で得られるというのは驚異的。具体的な『ご相談ごと』を、DeepLなどの主語と述部が明快な『英文』になおしてから相談すると、『推論プロセス』も英語で表記される。『推論プロセス』が理解できた上で、回答が得られる。同じ意味なのに、英語と日本語で推論結果のアウトプットが変化するのもユニークだ。中国語がきっといちばんフィットしていることだろう。API価格も激安だ。
中国のDeepSeekが低コストで高性能な生成AIモデルを開発したことは、米国に大きな影響を与えています。特に、エヌビディアなどの米国半導体企業の競争優位性が揺らぐとの懸念から、同社の株価が17%下落しました。また、DeepSeekの急速な台頭は、米国のAI分野での優位性を脅かす可能性があると指摘されています。
これに先立ち、トランプ大統領は、バイデン前政権による安全性を重視したAI政策を撤廃する大統領令に署名しました。今後、AI分野での競争がさらに激化する中、各国がどのような戦略を採用するのか注目されています。
ネットの反応は?
今でも多くの日本人は、日本人は勤勉で器用で真面目だから、モノづくりに おいては今後も世界のトップ座は譲らないだろうと思っているかも知れないが、 AI技術が進歩すれば、人間の勤勉さや器用さなんて何の役にも立たなくなって しまうだろうね。
はっきり言って、今の日本は、フジテレビや中居正広の事で大騒ぎしている 場合じゃないんだけどな。
ただ、日本のマスメディアの本当にレベルが低い点は、視聴者と一緒になって 騒いでいるだけで、世界の潮流に乗り遅れていることに対し注意を則すような 報道は全くしないんだよな。
浙江大学か・・・
ここ、精華大学や北京大学ほどは知られていないけれどドローンやコンピューター関係の分野で世界的なブレイクスルーをいくつも作ってる。動画も上がっているけれど自律的なドローンで1台がコーラよりも小さくて軽いのが編隊を組んで互いに情報を共有して障害を避けながら飛行するものを開発したりしている。
確かSwarmだったかな。とにかくすぐにでも実用化できる技術を次々と生み出している凄い大学だよ。
日本からこの手の世界的企業が生まれてこないと言うことが危機的。
知り合いの東大-官僚になった友達が居るが、その人が東大生に対しての講演で自戒も込めて、「東大生がつまらないビジネス起業したり官僚になったりしようとするのは間違えてる。東大生は自分の金儲けとかではなく、日本を世界を変えていくチャレンジをする人達です」と力を込めて言っていたのを思い出した。
編集後記
例によって天安門とか入力すると結果が出力されないらしいけど、当たり障りないことで利用するなら試してみる価値ありそう
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