石川県では、能登地方を震源とする地震により、携帯電話などの通信に障害が発生しています。2011年の東日本大震災の際には、停電により基地局の機能が長期間にわたって停止したことがありました。これを受けて、NTTドコモをはじめとする通信会社は、予備電源の準備など災害対策を強化してきました。しかし、今回なぜ通信復旧の見通しが立たないのでしょうか。
東日本大震災を教訓に
石川県の七尾市、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町の5市町では、地震の影響でドコモとKDDI(au)の携帯電話サービスに障害が生じています。6日午後2時現在、これらの地域の一部で音声通話やデータ通信が困難または接続しにくい状況が続いています。同様に、ソフトバンクは4市町、楽天モバイルは6市町で通信障害が発生しています。総務省の報告によると、この時点で4社合わせて603の基地局が機能していない状況です。
この通信障害は、地震発生時の1日午後4時10分頃から続いており、原因は地中の配線設備の故障や基地局の停電と考えられています。
2011年3月の東日本大震災を受けて、各通信会社は災害対策を強化してきました。当時、約2万9000の基地局が停止し、その多くが停電が原因でした。その教訓から、各社は基地局に予備電源のバッテリーを配備し、県庁や市町村役場などの重要エリアには発電機を設置して通信が途切れないよう対策を講じています。
予備電源、大ゾーン基地局を配備
ドコモは、大規模災害時に備えて、約7キロメートルの範囲をカバーできる「大ゾーン基地局」を国内に設置しています。これは通常の基地局のカバー範囲が数百メートルから数キロメートルに限られるのに対し、より広範囲をカバーするものです。2018年9月に北海道で発生した胆振東部地震時には、北海道釧路市の大ゾーン基地局が稼働し、一日程度の通信を維持した例があります。
しかし、今回の石川県での地震においては、通信障害が続いています。これにはいくつかの理由があります。まず、大ゾーン基地局は各都道府県の人口密集地に2箇所程度しか設置されていないため、被災地がこれらの基地局のカバー範囲外にある可能性が高いです。また、予備電源の稼働時間が約24時間と限られており、今回のように停電が長引いた場合、電源が切れてしまうためです。
道路渋滞で電源補給できず
そのため、通信会社は被災地に移動式基地局、移動電源車、および発電機を送ることで、燃料不足の問題に対処しようと努めています。しかし、被災地の道路が断裂したり渋滞が発生しているため、これらの機材を運ぶのが困難になっています。これが通信障害の回復を妨げる三つ目の要因となっています。KDDIの担当者は「必要な人員や機材はあるが、渋滞により運搬に苦労している」と述べています。
同様に、固定電話の通信設備も燃料不足に陥っています。NTT西日本によれば、6日午前9時の時点で、輪島市や珠洲市の一部地域では非常用電力が枯渇し、固定電話や光回線を使ったインターネット接続ができない状況が続いているとのことです。
船や衛星に期待
この状況の中で、海上や衛星を利用した通信手段が注目されています。ドコモとKDDIは、6日から輪島市沖の船上に設置した基地局を共同で運用し始めました。この基地局は衛星アンテナを通じて受信した電波を輪島市の沿岸地域に送信し、通信障害の復旧を目指しています。KDDIによる船上基地局の運用は、2019年9月に千葉県などで大きな被害をもたらした台風15号以来のことで、ドコモにとっては初の試みです。この基地局は数キロメートルの範囲をカバーすることができます。
さらに、KDDIは2024年内に米国のスペースXが開発した衛星通信サービス「スターリンク」とスマートフォンを直接接続するサービスを開始する予定です。このサービスは、空が見える状況であれば山間部などの圏外エリアでも通信が可能となり、災害時の対応にも役立つことが期待されています。
Wi-Fiを無料開放
一方で、公衆無線LAN(Wi-Fi)などのインターネット接続環境が利用可能な場合、安否確認や情報収集が行えます。2016年の熊本地震後、携帯電話会社4社は災害時に公共のWi-Fiスポットを無料で開放する「00000JAPAN」(ファイブゼロジャパン)プロジェクトを開始しました。このプログラムにより、今回の地震においても石川、福井、新潟、富山の4県でWi-Fiが無料で利用できるようになっています。
さらに、無料通信アプリ「LINE(ライン)」は、震度6以上の大規模災害時に、登録している「友だち」に対して、ホーム画面からワンタッチで安否を伝える機能を提供しています。
専門家の反応は?
今回被災した能登半島北部のように、災害時に孤立する可能性のある地域で道路の寸断や停電といった被害を受けると、携帯電話網や光回線の復旧には時間がかかります。このため、衛星電話やスターリンクのような衛星通信の準備を整えることは重要です。
ただしスターリンクに限っても、平時から利用方法の習熟と通信可能な場所の把握に加えて、発電機や燃料の備蓄、効率よく電力を供給するためのポータブル電源がないと有効活用できない点には注意が必要です。
一方で、2024年以後はKDDI(au)がスターリンクとスマートフォンの直接接続によるメッセージサービスのほか、各社が衛星通信を用いたサービスや協業を計画しています。これらをうまく活用できれば、災害時の情報収集がより容易になるかもしれません。
ネットの反応は?
能登半島は、海沿いに1周すると600km弱ある大きな半島で、被害が大きい地域は、ほぼ山岳地帯とよんでもよいような山を越えていくようなイメージの場所です。
現在は高速などが整備され、アクセスしやすくなりましたが、そのようなインフラがダメージを受けている現在は、アクセスは大変なことと思います。
被害の全体像が分からないのも、そのような場所に小さな集落が点在しているからであり、通信障害も平地ではないところが多いから、回復が難しいのだと思います。
港も今回の津波でダメージを受けた状態ではないかと思われるので、海からのアクセスも難しいのではないかと思われます。
ただすでに時間がかかっても、奥能登まで通行可能な状態のようだから、時間の問題だと期待しています。
季節も季節だし、東日本とは異なり、大都市の被害は少ないから、とりあえず希望する人は全員避難させてあげることが、一番の対策だと思います。
能登半島は海沿いに沿って町が続いているような状況で、電波は届きづらい環境に見えます。 仮に内陸にアンテナ建てたとしても、今回の被災地には届きにくい。 なので、海側から、船に臨時基地局を積んでいるんでしょう。
発災当時、震災の大きさに比べてなんとなく被害者数が少ない気がしていたのですが、単に確認できていなかった・通信手段も無かったということだと思います。
編集後記
スターリンクとスマホが直接つながれるサービスがスタートすれば、支援するのが難しい山間部の地域でも電波が届くので期待したいですね。こういったサービスの拡充のために携帯料金を使ってくれるなら多少高くても文句ないですね。
コメント