就職活動の際、企業の説明会などで「学歴社会」の存在を実感することは珍しくないかもしれません。また、「学歴フィルター」という問題に対する懸念もあるでしょう。
しかしながら、「ライボ」が運営するキャリア、就職・転職専門の匿名掲示板の調査部門「Job総研」が行った「2024年 学歴とキャリアに関する実態調査」(2024年2月13日公表)によれば、学歴社会に対して「非常に古い/古い/やや古い」と感じている人は59.5%に上る。
一方、学歴社会が必要かどうかに関する質問では、「非常に必要/必要/やや必要」と答えた人が66.0%にのぼりました。特に20代では、この見解を持つ人が73.9%に達し、年齢層別で最も高い割合を示した。
「学歴社会」という概念は時代遅れのものとされつつも、実際の採用現場ではこの考えを無視することは難しい。この調査結果からも、そうした矛盾した価値観が浮き彫りになっている。この点について、大学関連のジャーナリスト、石渡嶺司氏は、就職活動や企業の採用過程において、大学のブランドに固執することが採用目標達成を妨げるため、学歴に対する固定観念が徐々に薄れつつある現状を述べています。
学歴社会の価値観「もう古い」 学歴フィルターの存在 世代別では50代以上が最多
「2024年 学歴とキャリアに関する実態調査」は、629名の働く男女を対象に実施された調査であり、2024年1月24日から29日にかけてインターネット上で行われました。
この調査で最初に「学歴社会に対する考え方」について尋ねたところ、「非常に古い」と感じている人が10.5%、「古い」と感じている人が15.9%、「やや古い」と感じる人が33.1%で、合計59.5%の人々が学歴社会を古い価値観だと考えていることが明らかになりました。(図1)
年齢層別では、50代が「古い」と答えた割合が最も高く、63.5%(「非常に古い」10.4%、「古い」15.6%、「やや古い」37.5%)に上りました。
学歴社会の存在が必要かどうかについての質問では、「非常に必要」と答えた人が8.2%、「必要だと思う」と答えた人が19.2%、「やや必要」と答えた人が38.6%で、合わせて66.0%の人が何らかの形で学歴社会の必要性を感じています。(図2)
世代別では、20代が「必要だ」と答えた割合が最も高く、73.9%(「非常に必要」10.9%、「必要」21.2%、「やや必要」41.8%)でした。
学歴社会に対する肯定的および否定的な意見は、様々な視点から提起されています。
賛成派
- 学歴は取り組む姿勢や努力を客観的に判断できる材料になると思うので、学歴社会には賛成します
- 大勢の中から人材を発掘するためには、最低限度のレベルの保証のようなものにもなるので賛成
反対派
- 人手不足もあり、企業目線で考えると学歴での判断は一定理解できますが、個人的には反対します
- 学歴と仕事でのスキルは少し異なると思うので、学歴社会という「社会」になることには賛成できません
2000年代後半、「学歴フィルター」の問題が明るみになると
就職活動において頻繁に話題に上るのが、いわゆる「学歴フィルター」の問題です。これは、企業が採用の効率化を図るために、応募者の学歴を基準に選考を行うとされるものです。
大学関連の報道を手がける石渡嶺司氏によれば、
石渡嶺司氏
学歴フィルターが行われていたのは1990年代後半から2000年代前半で、学生が日常的に就職情報サイトを使い、企業が採用する学生を選べた就職氷河期のころです。
そして、2000年代後半になってメディアなど『学歴フィルター』が問題になると、『学歴差別をしている企業』というブランドイメージの悪化を逃れるため、学歴によるフィルタリングを大企業や外資金融がしなくなったという建前があります
と指摘。
その代わりとして登場したのが、適性検査の導入です。
石渡嶺司氏
最近では、書類選考前や書類選考と同時に、適性検査を実施する大企業が多いです。いわゆる能力検査は実質的にIQを図るようなものなので、優秀な学生を残すことができ、性格検査でミスマッチを防ぐこともできます
また、現在の就職市場では、学生が有利な「売り手市場」の状況が続いており、
石渡嶺司氏
これまで東大早慶を採用していた企業が、明治大学、青山学院大学などの大学群を採用したりするなど、いってみれば出身大学にこだわっていると採用予定数に達しない。そのため、学歴の縛りが緩くなっている時代だといえます
と石渡氏は話しています。
チャットGPTさんに学歴フィルターに関して聞いてみた
チャットGPTさん的に人材採用をする際に学歴である程度の選別をする事に関してどう思われますか?
学歴を採用基準の一つとすることには、その理由と背景に応じてさまざまな見解があります。学歴が特定の専門知識や技能の習得を示す指標として機能する場合、職種によっては必要な資格や専門性を保証する手段となり得ます。例えば、高度な専門知識を要する職業では、関連する学位が必要な能力や知識の有無をある程度保証することがあります。
一方で、学歴だけに頼った採用は多様性や潜在能力を見落とすリスクも伴います。特に、革新的なアイデアや多様な背景を持つ人材が求められる業界や役割では、学歴以外の経験や能力、個性が重要になることがあります。また、社会的な公平性や多様性を促進する観点から、学歴以外の要素にも目を向けることが求められています。
結局のところ、学歴を採用プロセスでどのように扱うかは、その組織の価値観、目指す目標、求める人材像に基づくべきです。学歴を一つの参考指標として考慮しつつ、個々の能力、実務経験、人物像、そしてそのポジションが要求するスキルや適性を総合的に評価することが、よりバランスの取れた採用に繋がるでしょう。
専門家の反応は?
学歴フィルターとは、正確には学校名フィルターであって、いわゆる高偏差値大学の学生優先に選考することを指しますが、高偏差値大学の学生なら誰でも採用する訳ではありません。
また年々変わる偏差値序列と随時連動している訳でもなく、経営層のイメージがかなり影響しているといえます。
残念ながら学生の応募が有名B2C企業(消費財製造等一般知名度の高い企業)に極端に偏るため、お互い様な現象です。 学歴フィルターでブロックされるのは、あくまで有名人気企業だけで、上場企業でもしっかり選考する企業はいくらでもあることを、学生の皆さんは忘れないで下さい。
「学歴フィルター」が、学歴(学校歴)自体を個人の採用時評価の際に重きを置くという意味なら、基本的には「ない」と思います。目の前にフィットする人がいるのに「学歴がなあ・・」と採用しないのは信じられません。
しかし、学歴によって企業がアプローチ方法を変えるという意味であれば、ふつうに「ある」です。特に最近導入する企業が増えたスカウトメディアでは50万人の就活生全員にスカウトメールを打つわけにいきません。新卒は中途と違い情報が少ないので、結局「まずは学校群をここらへんに狙いを定めて検索してみるか」となります。
ただ、この学歴フィルターは越えられます。OB/OG訪問など(学校の先輩でなくてもOK)能動的に学生からSNSなどででもアプローチすれば、見どころあると思われれば社内で推薦してくれるかもしれません。近年ではリファラル採用(社員紹介での採用)も増えているのでなおさらです。
俗に言う学歴フィルターは完全になくなったわけではなく、形が変わって残っていると認識するのが良いでしょう。
一部の難関企業や外資系企業は、大手ナビより高学歴層の学生が集まる就活サイトを使うようになっていたり、スカウト型で一部の学生にのみ特別な案内を送っていたり、大学別のイベントなどで直接アプローチをしていたりします。
これらの取り組みは学歴フィルターではないかもしれませんが、まだまだ学歴を重視した採用活動が行われていることの証拠と言えます。 もしそのような採用需要がないのであれば「上位大学に強い採用支援会社」が上場したりはしないはずです。そのような会社が複数上場しているということは、そこにそれだけ企業のニーズがあるという事です。
その現実をしっかり認識し、どういった場所で企業の採用活動が行われているかを認識すれば、就活をより有利に進められるでしょう。
ネットの反応は?
募集人数に対して何倍もの多数の応募がある会社ならば、履歴書段階である程度はふるいにかけないと全員と会って話すことは時間的にもできないと思います。その中から何回面接をして人をよく見て採用されます。
ある程度は学歴フィルターはやむを得ないと思います。賢い人達はそれがわかってて、就活時に人を見てもらうチャンスを得るために受験勉強を頑張ってます。
単位認定の標準化が進む欧米とは違い、日本の大学は同じ一つの単位であっても大学によって質も認定の難易度も異なっており、大学毎で入学、卒業はそのまま個人の高等教育の習得レベルを表してしまっている
そういう環境である以上、採用に一定のフィルターがあるのは仕方ない 特に研究開発人材は顕著。学会等での実績があるなら別だが、どんなに売り手市場になろうと、一定以上のラボ以外からの採用はしない
たとえは悪いがワインのラベルを得たからと言って、産地、畑が異なれば品質、味も香りも異なるので、どうしたって『ニーズ』に差が生じる
研究者なら知財創出の即戦力がまるで違う
これを差別というのは、努力を否定するようなものだ
問題の本質は公教育機能不全と高等教育の馬鹿げた高騰化、公投資欠如で親の金で決まるような高等教育機会の不均等、受験制度の方。金があれば進学できるFラン大学を採用側が区別したからと言って差別にはならない
学歴が高い方が相対的に優秀な人材が多いのは、人事をしていて実感することです。やはりしっかり勉強している人はアウトプットの引出しがあり、頼もしいです。 それと同時に、仕事は勉強と多分に違うところがあり、人としての賢さによって活躍するかどうか変わってきます。
サラブレッドでも走る気がない馬は安定した成績を残しません。その安定感を人に重ねるて言うと、人のために頑張りたいという気持ちがあるとか、自分の置かれた環境をプラスに受け止めてできることをやるとか、人を許せる心があるとか、情緒が安定しているとかです。
こういう人は学歴がFランであっても企業になくてはならない存在です。
編集後記
就職氷河期まっただ中で就職した50代、40代の方は学歴フィルターに何かしらの嫌悪感みたいなものを感じているような気がしますね。
数十年と働くと学歴で仕事は出来ないからそれって重要視するポイント?って感じるんでしょうね。
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