アップル、新型MacBook AirとMac Studioを発表

アップルは3月5日、最新のAppleシリコンを搭載した新型MacBook AirとMac Studioを発表した。

MacBook Airは、Macシリーズの中でも最も多くのユーザーに選ばれているモデルだ。一方、Mac Studioはプロフェッショナル向けの高性能かつコンパクトなデスクトップで、しばらく更新が途絶えていたが、今回久しぶりのアップデートとなった。

MacBook Airには新色を追加

Macシリーズの売上を支えるMacBook Airに搭載された第4世代Appleシリコン「M4」は、単なる性能向上にとどまらず、大きな意味を持つ。M1搭載モデルと比較すると処理速度は最大2倍に向上し、GPUもレイトレーシングやメッシュシェーダに対応することで高性能化を果たしている。それでいて消費電力は極めて低く、冷却ファンを搭載しないMacBook Airでもその性能を存分に発揮できる。

また、標準メモリが8GBから16GBへと倍増した点も見逃せない。これはApple Intelligenceの導入を視野に入れ、オンデバイスAI用の言語モデルをメモリ上に常時ロードできるようにするための措置と考えられる。

メモリ容量の強化は、Windows PCとの競争においても優位に働く。同価格帯のWindows PCの多くが依然として8GBを標準としていることを踏まえると、長期的なユーザーエクスペリエンスの面で一歩先を行く戦略が垣間見える。

さらに、外部ディスプレイ対応も強化された。従来は1台のみの接続に制限されていたが、本体画面に加え、最大6K解像度のディスプレイを2台まで同時に接続可能となった。

M4の搭載によって基本性能が大きく向上し、これ一台でこなせる作業の幅が広がった。加えて外部ディスプレイ対応が強化されたことで、デスクトップ環境でもより活躍できるようになった点も大きな進化だ。

内蔵カメラも刷新され、12MPのセンターステージ対応カメラが搭載された。これは上位モデルで採用されているものと同様で、高画質な超広角カメラを活用し、ユーザーの顔を自動で追従しながらフレーミングを調整する機能を備えている。

プロ向けMac強化で専門市場へ攻勢

プロフェッショナル向けデスクトップのMac Studioは、M4 MaxとM3 Ultraの2種類のチップオプションが用意され、幅広い専門ユーザーのニーズに対応する形となった。

M4 Max搭載モデルは、最大16コアCPUと40コアGPUを備え、第2世代レイトレーシングエンジンなど最新のグラフィック技術を搭載している。M1 Max搭載モデルと比較すると最大3.5倍、最も高性能なIntel搭載27インチiMacと比べても最大6.1倍の処理速度を実現しており、その性能の高さが際立つ。ただし、このチップはすでにMacBook Proにも搭載されており、その実力は広く知られている。

特に注目されるのはM3 Ultra搭載モデルだろう。2つのM3 Maxチップを独自のUltraFusion技術で統合することにより、最大32コアCPU、80コアGPUという圧倒的なスペックを実現。標準で96GBの統合メモリを搭載し、最大512GBという前例のない大容量メモリ構成も選択可能となっている。

512GBモデルは、600億パラメータを超える大規模言語モデル（LLM）をLM Studioなどでメモリ内にロードし、実行できるレベルに達している。これにより、オンプレミスでのAI開発や研究用途に新たな選択肢を提供するだろう。

Appleシリコンはユニファイドメモリアーキテクチャを採用しており、CPU、GPU、Neural Engineが同じメモリ空間を共有できるため、大容量メモリの搭載によって各プロセッサコアの性能を最大限に引き出すことが可能となる。

また、M4世代では新たにThunderbolt 5ポートが搭載された。最大120Gb/sの高速データ転送が可能になったことで、拡張性が大幅に向上。これにより、高速外部ストレージや各種拡張機器との接続が容易になり、拡張スロットを持たないモジュラー型筐体の弱点を補う形となっている。

Mac Studioの価格は日本では328,800円（税込）からと決して安価ではない。しかし、従来型のプロ向けワークステーションと比較すると、そのコンパクトなサイズ、省電力性、静音性を考慮すれば、十分に競争力のある価格設定と言えるだろう。

“オンデバイスAI”で足元を固めるアップル

今年4月から開始予定の日本語版Apple Intelligence（AI機能）への対応も進められている。

推測の域を出ないものの、Macに搭載されるメモリ容量の増加傾向を考えると、iPhoneとMacではApple Intelligenceが利用するAIモデルの規模が異なる可能性がある。

Apple Intelligenceは、使用する言語ごとに異なるAIモデルをダウンロードして利用する仕組みを採用している。ドルベースで100ドルの値下げを行いながらも、Macの標準メモリを倍増させた背景には、Mac向けにより大規模なモデルデータを準備している意図があるのかもしれない。

プライバシーを重視するアップルは、オンデバイスでのAI処理を軸に製品価値を高める戦略を推し進めている。今回の製品も、可能な限り多くの処理をデバイス内で完結させる設計思想が反映されている。

マイクロソフトをはじめとする企業がPCへのAI機能統合を進める中、業界全体でAI搭載PCの流れが加速している。長らく成熟市場と見なされてきたPC業界も、AI機能の本格的な導入によって、新たなイノベーションのサイクルに突入しつつある。

なお、製品の予約受付は3月5日から、販売開始は3月12日からとなっている。日本でも間もなく利用可能となるApple Intelligenceの動向とあわせて、今後の展開に注目したい。

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