外食市場の急速な回復の中で、グルメサイトの運営状況には顕著な差が見られます。一方で「食べログ」が順調に推移する中、「ぐるなび」は挑戦を続けており、最近では「楽天ぐるなび」としてブランド名を変更しました。この背景には何があるのでしょうか。
ぐるなびの挑戦:2024年3月期中間決算で見えた光と影
「ぐるなび」が2024年3月期の中間決算を11月1日に発表したところ、売上は前年同期比で3.6%減の約56.5億円となりました。しかし、2023年度の全体としては前年比11.4%増の137億円の売上を見込んでおり、年末年始の需要増加に期待をかけています。
営業損益は7300万円の赤字で、前年同期の16億円の赤字からは大幅に改善されましたが、全体の営業赤字は7億円になる見込みです。これは2021年3月期の74億円の営業赤字から見ると大きな改善ですが、4期連続の赤字となります。
財務状況も厳しく、3期連続の大赤字を計上した結果、2020年3月末の187億円だった利益剰余金が、2023年9月末には2.5億円まで減少しました。
財務基盤は以前は無借金で安定していましたが、2021年には主要株主である楽天グループなどから33億円の資金を第三者割当増資で調達し、2022年12月にはオプティムとの資本・業務提携を通じて更に3億円を調達しました。また、資本金を23億円から1億円に減資し、税金の負担を軽減しました。市場価値は2016年の約1300億円から、現在は約170億円にまで低下しています。
食べログの驚異的な回復力:外食市場の新たな動向
外食市場の復活の中、カカクコムの「食べログ」の成長は目立っています。2024年3月期の中間決算(4月から9月)で、食べログの売上は前年同期比で20.5%増の約130億3600万円に達しました。食べログの具体的な損益は明らかにされていませんが、このサービスと「価格.com」を含むセグメントの利益は5.4%増の110億円で、好調を維持しています。
この状況と対照的に、「ぐるなび」の回復は遅れを取っているようです。両社の業績に生じたこの大きな差には、主に2つの理由があります。
まず第一に、両社の収益構造の違いが挙げられます。一般的に、グルメサイトは飲食店の宣伝や写真掲載などのサービス提供による月額固定の販促サービス料と、ネットでの予約獲得に応じた従量制の予約手数料から収益を得ています。
「ぐるなび」の場合、月額固定型の収入が全体の約60~70%を占め、これは「食べログ」の約50%と比較しても高い割合です。コロナ禍以前、「ぐるなび」の主要プランは月額5万円で、これは「食べログ」の2.5万円プランよりも高額でした。にもかかわらず、「ぐるなび」は単なる情報掲載にとどまらず、経営分析などの充実したサポートを提供していたため、需要は高かったのです。
しかし、コロナ禍により状況は一変しました。飲食店は売上の急落に直面し、月額の手数料が固定費としての重荷になりました。その結果、多くの店舗がサービスの解約や低額プランへの変更を余儀なくされました。
鍵は有料加盟店の減少
2021年9月に主要なプランの価格を3万円に引き下げた「ぐるなび」ですが、解約の波は収まらず、ピーク時の約62,000店舗だった加盟店数は現在約42,500店舗にまで減少しました。
杉原章郎社長
有料加盟店舗数はようやく底を打って増え始めている。再加盟もそれなりの数になっている
と同社の杉原章郎社長は語っていますが、一度離れた顧客を取り戻すのは難しい状況です。
その一方で、「食べログ」は月額固定課金が主力とはいえ、予約手数料による収益比率が「ぐるなび」よりも高いです。食べログの予約手数料はランチが1人あたり100円、ディナーが1人あたり200円で、これは「ぐるなび」のランチ11~41円、ディナー55~205円と比較しても高額ですが、最近の飲食店需要の急激な回復により、その恩恵を受けて業績が好調です。
もう一つの理由は、対象とする店舗業態の違いです。「ぐるなび」の有料加盟店舗のうち、居酒屋業態が37%を占め、特にチェーン系大手居酒屋が強みです。一方で「食べログ」は具体的な業態別割合は公表していませんが、大手居酒屋だけでなく、小規模居酒屋やカフェ、レストランなど多様な業態にバランス良く展開しています。
業界関係者は
ぐるなびは、10人以上の大人数の宴会に強かったため、宴会需要の蒸発によるインパクトが大きかった。今は外食需要がかなり戻ってきているが、それでも大きな宴会需要の戻りは弱い
と指摘しています。
ぐるなびの回復への期待は、特に筆頭株主である楽天との協業にかかっています。15.6%を出資されている楽天とは、サービス名を「楽天ぐるなび」に変更するほどの密接な関係です。
ぐるなびと楽天は2018年に資本業務提携を結び、ぐるなび会員のうち約787万人が楽天IDと連携しています(2023年9月末時点)。予約を通じて楽天ポイントが貯まるという特典を前面に出し、楽天会員にアピールする戦略です。ネット予約の増加は、月額固定型サービスの加盟店舗数回復にも寄与するでしょう。
ぐるなびは元々、ポイント還元率が高く宴会の幹事に好まれていた。楽天ポイントを前面に出したのも、ポイント還元を重視するユーザーが多いことを自覚しているのだろう
と競合他社の関係者は言います。
しかし、楽天は携帯電話事業への大規模投資が負担となり、業績が下降しています。楽天ポイントの還元率の低下により、消費者からの不評がSNSで「楽天改悪」としてトレンド入りするなど、批判も高まっています。
若年層に顕著なグルメサイト離れ
「食べログ」は、これまでの「Tポイント」サービスに加え、11月の終わりから三菱商事やローソンなどが展開している「Ponta(ポンタ)ポイント」の付与を始める予定です。今後「楽天」からの消費者の離れが進むと、ぐるなびが提供する楽天ポイントの魅力も影を潜める可能性があります。
ぐるなびにとっては、新しい収益源の開発が急務となっています。2022年には楽天からデリバリー・テイクアウトサービスを引き継ぎましたが、1年余りでこの事業から撤退しています。
現在、ぐるなびが力を入れているのはモバイルオーダーサービス「ぐるなびFineOrder」です。このサービスでは、顧客がスマートフォンでQRコードをスキャンすることで、料理の注文と決済が可能になります。大手居酒屋チェーンなどでの導入が進み、ぐるなびも営業戦略を強化しています。
一方で、特に若い世代を中心に、飲食店のユーザーの間でグルメサイトからの離れが進んでいます。Google検索やSNSを利用して飲食店を探す動向が拡大しているのです。従来のように飲食店を探して予約する形式のグルメサイトのみに依存するビジネスモデルでは、成長が難しくなっています。そのため、ぐるなびは既存事業の再建と新しい事業の開発という二重の課題に直面しています。
専門家の反応は?
飲食店を検索する上で、かつては「食べログ」「ぐるなび」などが使われていましたが、現在主流となっているのは「Google Map」や「Instagram」「TikTok」などのSNSでしょう。その背景にはこの10年におけるスマートフォンの普及率が圧倒的に上昇したことがあります。
2010年のスマートフォン普及率はおよそ4%でしたが、2023年は96.3%と利用者と非利用者の比率が逆転しています。PCでの利用が当たり前の時代に設計されたサービスは、今の時代にマッチした設計に変化しなければ生き残れません。「食べログ」は単なる検索だけではなく「ネット予約」を強化したことでニーズを受け止めている印象です。
ネットの反応は?
食べログの点数もかつてはある程度参考になりましたが、今ではまだGoogleマップのレビューの方が一般人のレビューが多く、参考にできると思います。
食べログのレビューを書いている人はあまりにもプロ意識が強い人が多く、お店の事ではなくレビューを書いている自分に振り向いて欲しい人達が多い気がします。
近所の飲食店の口コミを見たら、近所のガキがうるさく、落ち着いた食事ができず、味も普通と書かれているのを見て、びっくりしてしまった。長年リーズナブルな価格でイタリアンを提供しているお店で、近所でも人気ある店。場所柄シティホテルが多く、観光客もたくさんくるため、近所の飲食店も利用されている。リーズナブルなお店から本格的なホテルの店まで幅広くある。今の時代、それこそ口コミで、どういった場所か想像つきそうだが、前述のようにガキがうるさいとなる。近くにはゆったり食べられるホテルのイタリアンもあり、店を選べば済む話と感じる。リーズナブルな店に何を求めてるか知らないが、口コミが過剰過ぎて店が不憫でならない。
食べログよりグーグルマップになりました。地図上で行きたい場所辺りで拡大してお店の情報やレビュー等を見てますがこちらのほうが便利ですし意外と知らないお店も出てきて行きたいなって思いました。場所やお店を自分用に行きたい場所保存もできますし。
編集後記
店を探すにも選択、それを探すツールにも選択、またそこでレビュー読んでなんてやってたら疲れちゃうんですよね。
コメント