総務省が2023年の最新版「情報通信白書」を4日に公開しました。その内容によると、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)上に表示される情報が、その運営会社により選択・編集されていることについて、日本のユーザーの認識率は欧米や中国と比較して顕著に低いという結果が示されています。
SNSは今や私たちの日常生活に不可欠なコミュニケーションツールであり、そこで得られる情報が意見形成や行動選択に大きな影響を与えると言われています。しかし、この白書によれば、SNSに掲載される情報が全てが真実ではなく、特定の企業によって選び出されたり、編集されたりしていることを理解しているユーザーの比率が日本では非常に低いとのことです。
これは、情報がどのように選択され、提供されているのかを理解せず、偏った情報によって意見が形成されるリスクを指摘しています。もし一部の情報に偏ることで、ユーザーの思想や意識が変容し、それが社会全体に影響を及ぼす可能性があると総務省は警告しています。
日本の情報リテラシーが問われる:SNSの情報選別認識率が欧米・中国の半分以下
ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)や動画共有サイトなどの運営企業は、ユーザーの閲覧履歴や検索履歴を基に、ユーザーが関心を持ちそうな情報を優先的に表示することで、閲覧回数を増加させています。
総務省の公表した2023年版「情報通信白書」によれば、SNSがユーザーの興味や意見に基づいて情報を選択表示する機能についての調査を行いました。その結果、この機能について「詳しく知っている」「ある程度知っている」と答えたユーザーの割合は、米国が77.6%、ドイツが71.1%、中国が79.9%であったのに対し、日本は合計38.1%と、他国の約半分に留まる結果が出ました。
SNSの利用により、「エコーチェンバー」すなわち自分の考えと同じ情報にばかり触れる状況、または「フィルターバブル」つまり好みの情報だけが届く状態が生じる可能性があり、これは情報の流通に偏りを生じさせます。そのため、白書では、より公平で健全な情報の流通環境の確保が必要だと指摘しています。
ニュース用語解説
エコーチェンバー
エコーチェンバーは、特定の情報や観点のみが強調され、他の観点が消されてしまう現象を指します。
例えば、ある人が政治的な意見をSNSで表現したとします。その投稿は、その人と同じ意見を持つ人々によって共有され、コメントされ、拡散されます。この過程で、その人のフィード(表示される情報の流れ)は、その人の観点を強化する情報で溢れていきます。一方、反対の意見や異なる観点を持つ人々の情報は、フィードから除外されてしまう可能性があります。
これがエコーチェンバーです。そして、この現象は、個々の視野が狭まり、一方的な情報しか得られなくなるという問題を生む可能性があります。多様な観点や意見に触れることは、自身の意見を形成し、深める上で非常に重要です。しかし、エコーチェンバー現象が起こると、それが難しくなってしまうのです。
フィルターバブル
「フィルターバブル」は、インターネットやソーシャルメディアが私たちに提供する個別化された情報空間を指します。この概念は、インターネット活動家であるイーライ・パリサーによって2011年に初めて提唱されました。
基本的には、私たちがオンラインで何を検索し、何をクリックし、どのような情報に反応するかといったデータを、ウェブサイトやソーシャルメディアのアルゴリズムが収集します。これらのアルゴリズムは、そのデータを基に私たちが興味を持ちそうな情報を選び出し、その他の情報をフィルタリング(選別)します。この結果、私たちが見る情報は自分の興味や既存の信念に基づいたものに偏り、それが「フィルターバブル」を形成します。
たとえば、ある特定の政治的見解を持つニュース記事をよく読む人は、その人のSNSのフィードやGoogleの検索結果は、その見解を支持する記事で埋め尽くされることがあります。これは、アルゴリズムがその人がその種の情報に興味があると判断し、それに基づいて情報を選別しているからです。
しかし、この現象は問題を引き起こす可能性もあります。それは、私たちが多様な視点や異なる意見を見聞きする機会が減少し、自分の信念や価値観が絶対的であると錯覚しやすくなることです。これは、エコーチェンバー現象とも関連しており、両者はしばしば同時に議論されます。
専門家の反応は?
SNSは自分の考えや価値観に近いアカウントをフォローします。その結果、もし自分の意見が偏っていたとしても、SNSには自分と同じ意見があふれているため、正しいと思い込んでしまいます。閉じた世界にいることで、デマやフェイクニュースに気づくきっかけも失われてしまいます。なかにはアフィリエイトに誘導するために極端な意見を投稿するアカウントもあるので、いくら拡散されていたとしてもそれを根拠に信じないようにしましょう。SNSで拡散されるブログやメディアの記事も同じく慎重に精査したいものです。アテンションエコノミーの弊害とも言えますが、情報への接し方について見直す時期が来ていると感じています。
SNSや検索サービス、ニュースサービス等では、アルゴリズムによって「その人の見たいもの」が優先的に表示されるようになっています。その方がユーザが利用してくれるようになり、儲かるからです。そのため、2人のユーザがSNSで全く同じ人をフォローしていたとしても、同じタイムラインにはなりません。また、同じニュースサービスでも、人によって全く異なる記事が表示されます。
これはすべての人に起こっている現象であり、防ぐことは困難です。大切なのは、「そのような現象が起きている」「情報の偏りは常に発生している(ネットに限らず)」ということを認識し、自分の見ている世界が全てだと思わないことです。
ネットの反応は?
SNSに限らずメディアはほぼ全て偏ってるでしょう だから情報ソースを確認して、複数の情報を統合して判断する必要がある これは昔から変わらない
ニュースも見ず、自分の都合の良い情報しか見ない人は注意した方がいいと思います
編集後記
専門家の方はみなさん、警鐘を鳴らしていますね。
ただ、この記事自体も知って欲しい方に届いているのか。。
社会全体でネットリテラシーに関して考える必要がありますね。
小学校からIT全般に関しての教科をいれて知識を身につけていって欲しいです。
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