2021年に新卒で入社した人のうち、3年以内に辞めた割合は34.9%で、3人に1人以上が離職したことになります。この数字を多いと感じるか少ないと感じるかは、人それぞれのようで、街で幅広い世代に意見を聞くと様々な反応がありました。専門家は、時代の変化に伴い、企業が価値観を見直す重要性を強調しています。
直近15年で最も高い離職率に
3人に1人が3年以内に離職─。25日に発表された厚生労働省の調査によると、2021年3月に大学を卒業して新卒で就職した人のうち、3年以内に離職した割合は34.9%となり、過去15年で最も高い数値を記録しました。
「驚きはない」「リサーチ不足」
妥当かな。驚きはないです。踏ん切りつけるなら早い方がいいと思うので。転職は否定派ではないですし
事前に調べないで(職場に)入っちゃった人だと、すぐ辞めちゃったりする人が多いと思うので、就活するときにちゃんとどういう仕事なのか調べてやれば、ミスマッチもないのかなと
“上の世代”からは厳しい声が
厚労省は離職率の上昇について、「就職活動時に新型コロナウイルスの影響を受けた世代で、求人が減少し、希望する職種に就けなかったことが、離職の一因になっていると考えられる」と分析しています。
一方で、上の世代からは厳しい意見も聞かれました。
我々の世代は退職に良いイメージはないので、いまの人たちにはそんなのは関係ないのかな
私は昭和世代の人間ですから、仕事命、家庭のためという考えで仕事はやってきた。(若い人は)考え方が甘いと思うんですよ。高校生ぐらいの感覚で世間に出られているのかなと
仕事を辞めたいと思ったことは?
この60歳前後の2人は、離職に対して否定的な立場でした。これまでに仕事を辞めたいと思ったことはなかったのでしょうか?
仕事がきつくて逃げたいなと思ったことはあります。ただ、逃げてもしょうがないので
会社に対して不満はあるけど、頑張った結果、店長という立場までさせていただいたのは感謝しています。長く続けることで自分のスキルを上げて、社内での登用の機会をいただいて、そういった立場になれたのは喜ばしかった
離職の経験がある若い世代は?
「つらくても続けるべき」という意見に対して、離職経験のある若い世代はどう感じているのでしょうか?
今年8月に離職し、就職活動中の28歳は「根性だけでは生きていけないですから」と話します。9年前に転職した保険業界で働く34歳は「私はいま管理職なんですけど、辞めない環境をつくれなかった人が悪い。その環境づくりを含めて上司の役割だと思うので」と述べています。
最多の転職理由は「賃金の条件」
厚労省が実施した別の調査によると、若い世代に転職理由を尋ねたところ、「賃金の条件がより良い会社に移りたい」という回答が最も多く、次いで「労働時間や休日・休暇の条件が良い会社に移りたい」という意見が多かったというデータも示されています。
「楽しくなることも」「転職も視野」
これから社会に出ていく学生たちの考えは様々です。
会社って一個決めたら最後までやるイメージだったので。合わないなと思うなら辞めるのはいいと思うんですけど、続けてみて楽しくなることもあると思うから難しい
長く働ける会社に就職したいなというのはあるんですけど、自分の市場価値が上がるような専門性を身につけたいと考えていて、転職も視野には入っています。上の人とは時代も変わっている
若者の離職率UP、専門家の見方は?
専門家は、若者の離職率の増加についてどのように捉えているのでしょうか? 若者の就職事情に詳しい組織開発の専門家、勅使川原真衣さんに話を伺いました。
自分らしくいられないなら違う場所、もっと咲ける場所を探そうかなという発想に切り替えていく方が若干増えている
『成長実感』みたいな言葉を使う方も多い気がしていて、『自分が成長している感じがしないからほかのところに行った方がいいんじゃないか』という声はよく聞きますね
企業には何が求められるのでしょうか?
出戻り制度などもよく聞くようになった。長い目でリレーション(関係)をつかず離れず作っておく、というのが一つの企業がとれるオプションになってくる。価値観を変えていく、時代の流れに合わせていくというのは必要なことかなと思います
離職率と退職率の違いをチャットGPTさんに聞いてみた
離職率と似た言葉で退職率ってありますけど違いは何ですか?
「離職率」と「退職率」は似た言葉ですが、使われる場面や意味が少し異なります。
- 離職率: これは主に企業や特定の業界において、一定期間内に従業員が会社を辞める割合を示します。離職の理由は転職や退職など多岐にわたります。一般的には「雇用契約が終了した割合」として使われ、労働市場全体や特定の組織の状況を分析する際に使用されます。
- 退職率: 退職とは、個人が自らの意思で会社を辞めることを指すため、退職率は「自己都合で退職した人の割合」という意味で使われることが多いです。特に定年退職や自主的な退職を指す場合に使われることが一般的です。
まとめると: 離職率はより広範な意味で使われ、退職率は特に自発的な退職に焦点を当てた言葉という違いがあります。
専門家の反応は?
転職をしたい時にできるということ自体はとてもよいことですし、辞めることの倫理的問題とかも別にないと思います。職業選択の自由があり、自分の人生は好きなように生きればよい。
しかし、能力開発の観点からは心配です。どんな能力でも繰り返しにより処理の自動化(無意識化)ができることで「身につく」わけですが、短期間で仕事を変わると、そこまでいかないうちに止めることになります。
主観的には「飽きた」「もうできるようになった」と思って次に行こうということかもしれないのですが、「後もう少し」という状態が多い。
「飽きた」というのはまだ意識的にやってる可能性が高いからです。身についたなら、無意識ですらすらできて「楽勝」になり、快適ですらある。そこまで行かずに能力開発を止めては、それまでの努力は徐々に消えてしまい、能力が積み重なりません。
ここ数年は教員もしているため、その立場を交えて述べたいと思います。ここ数年はコロナ禍による行動制限がありました。今は大学では対面講義に戻っておりますが、コロナ禍直後は大学生もWeb会議形式による講義受講や動画視聴による行動制限を余儀なくされました。コロナ禍直後のコミュニケーションの機会の減少経験が、その後の新卒の離職行動にも影響を及ぼしていると思います。本来ならば直接、コミュニケーションを取って学ぶところをWeb会議や動画視聴で済ます経験をしてしまったため、今の新卒の方々は、自ら直接、相手とコミュニケーションを取って解決する経験が、コロナ禍前の新卒の方々よりは減っているように思います。
入社と同時に退職宣言、退職代行サービスの利用者が急増、最初の1社と割り切る若者の増加、JTCと揶揄されGAFA予備校と化す日本企業、ゆるブラック企業を避ける若者など、言うまでもなく空前の売り手市場、人手・人材不足など、若者の離職に関するニュースがてんこ盛りの割りには、このデータは40年近く変わらないデータだ。大卒者は3年で3割前後退職する。
もちろん、中途採用の求人数および有効求人倍率などにより変動する。細かい変化も見るべきだ。ただ大きくは変わっていない。
よく打たれ弱い若者が増えた、我慢が足りない、過剰なまでの自己実現志向、ブラック企業の出現などの言説もあったが、簡単には検証できない。なぜ退職したのか、本音ベースでの丁寧な把握が必要だが難易度は高い。
ただ、なぜ若者は3年で3割辞めるのか?それは辞められる環境にあるからだ、求人があるからだという視点も持っておきたい。
ネットの反応は?
昔と違って転職市場も活発で、意識的にも転職のハードルは低くなった。 極論言えば、真っ当な仕事で生活に困らないように稼げてメンタル病んだりしなければ、いつ転職しようがひとつの会社にずっと勤めようがかまわないと思う。
ただ、期間や理由によっては条件が悪くなり「生活に困らないように稼げて」の部分がままならなくなることもあるのでよく考えて決めたほうがいい、と、個人的には思う。
最終的には自身の責任と判断で。
すぐ辞める方が悪いのか、会社が悪いのかは、場合によりけりでしょうが 今の若い方は需要が高く、辞めても次が比較的見つかりやすい、というのはあるのでしょうね。
ただ、すごく優良かつ人気の所は、新卒だけで十分以上の供給を満たせているでしょうから、 辞めてもそういった優良企業へ転職できるかは、疑問ではありますね。
編集後記
辞めても次に働く場所の選択肢があるという事なんですかね。
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