ブッキングドットコム、世界最大のオンライン旅行予約サイト(OTA)は、今年6月からのシステム更新による一部の宿泊施設への支払い遅延問題で批判を受けている。多くの宿泊施設オーナーがこの遅延による経営への影響を訴え、ブッキングドットコムのオランダ本社および日本法人であるブッキングドットコムジャパンに対して集団訴訟を検討しているとのことだ。
10月20日にも集団提訴に踏み切る
加藤博太郎弁護士、宿泊施設の代表者として、10月19日までにブッキングドットコムに遅延金の支払いを要求している。10月20日には、支払いがなければ集団訴訟を開始するとのこと。10軒以上の施設が参加し、被害額は少なくとも数千万円と見られる。
風屋グループ、岐阜県や奈良県での宿泊施設運営者であり、代表の松尾政彦氏も訴訟の原告として参加する予定。同グループの施設は、予約の大部分をブッキングドットコムに依存しており、9月の売上600万円にも関わらず、入金はされていない。
松尾氏は、年金事務所との交渉に困難を感じている。年金事務所からの「支払いがなければ、資産を差し押さえる」との通知に、ストレスを感じ閉館を決めた宿泊施設もあるという。
松尾氏は、
私は賠償金がほしいわけではない。提訴を通じて、ブッキングドットコムがわれわれのような小さな宿泊施設にも支えられていることを知ってほしい
と述べている。
ブッキングドットコムの支払い遅延は、今年6月から始まった。原因は、オランダのアムステルダムにある本社での決済システムの更新。ブッキングドットコムは、システムの更新は完了しており、大部分の支払いは再開されているが、「一部の支払いに遅れがある」と認めている。
中小規模の旅館は財務基盤が脆弱
ブッキングドットコムは、システムの改修が完了しているにも関わらず、宿泊料金の入金が遅れている理由として、「海外と日本の銀行間送金でエラー」と「登録している(宿泊施設の)銀行口座の照合に時間がかかる」ことを指摘している。
経営に関する問題が疑われるかもしれないが、同社は「経済的な問題はない」と明言している。ブッキングホールディングスの2023年6月の決算を見ると、現金と預金は146億ドル(約2兆1900億円)であり、半年間の売上は92億ドル(約1兆3850億円)、純利益は15億ドル(約2300億円)と好調である。
しかし、ブッキングドットコムの予約が多い小規模な宿泊施設は、入金の遅れによって大きな影響を受けている。特に中小の旅館などは、大手ホテルと比べて財政的な基盤が弱く、少しの遅れでも資金繰りに問題が生じる可能性がある。
松尾氏は、
ブッキングドットコムからの支払い遅延によって、従業員への給与や(食品やアメニティなど)仕入れ業者への支払いが遅れている宿泊施設もある
と指摘している。
松尾氏は、ブッキングドットコムの対応に不満を感じている。8月からサポートセンターに問い合わせているが、具体的な回答はなく、「財務部に確認する」との返答のみ。内容証明郵便を送った後、大阪の担当者からの対面での説明と謝罪の申し出があったが、オンラインへの変更となった。
松尾氏は、
支払いの遅延が発生しているのであれば、担当の取締役や社長などが宿泊施設側へ事情の説明と謝罪をするべき
と強く主張している。
ブッキングドットコムに頼らざるを得ない事情
ブッキングドットコムでの大幅な入金遅延にも関わらず、宿泊施設が簡単に同サイトを離れるわけではない。「ブッキングドットコムは他の海外OTAよりも予約率が高く、集客能力も優れている」と、インバウンド専門のホテル関係者は語る。
自社のウェブサイトでの海外からの集客を増やすためには、海外での広告やPRが必要だが、多くの中小規模の宿泊施設にはそのための資金やリソースが限られている。コロナの影響が落ち着き、インバウンドが回復する中で、ブッキングドットコムの役割はさらに重要になると予想される。
われわれのような宿泊施設があってこそ、ブッキングドットコムの競争優位性がある。今回の件を通じてより良い協力関係を築けるようにしたい。それが提訴で得られる一番の利益だと思う
と、松尾氏は語る。
ブッキングドットコムは、このような意見に対して真摯に対応するべきだ。
ネットの反応は?
ホテル勤務です。
bookingやAgoda、Expediaと言った海外系の予約サイトは、楽天やじゃらんなどの国内系のサイトと異なり、本国の本社の言いなりで一方的なビジネスのやり方です。
インバウンド対策で止むを得ず使っていますが、ユーザーの立場としては絶対に使いたくありません。
変更やキャンセルの融通が効かず、サポートも無いに等しいです。よくお客様から電話での変更やキャンセルの問い合わせを受けますが、海外系の予約サイトはホテル側ではほぼ何も出来ないので、お客様も困り果てている事が多いです。
ただ、業績は絶好調なので、言われている様な経営危機では無く、またいつもの本社都合なのは明らかです。一言で言えば「ドライな殿様商売」です。
問題の本質は、ブッキングドットコムは、利用者には宿泊施設の利用を売るという旅行業を営んでいるのに、海外のネット企業である事を理由に、旅行業法の対象となっていないことだ。つまり、国土交通省の不作為が本件の真因だ。ブッキングドットコムの事業はJTBと同じだ。にもかかわらず業法の対象ではないといえば、分かりやすいだろう。規制緩和という言葉に騙されると、こういうことになるという良い例だ。このようなことは、業界自身が動かなければ、解決しない。
ブッキングドットコムは、いろいろトラブルがありますね。
私も先日海外で、ブッキングドットコムで予約したホテルへ行ったら、予約が受け付けられていなかったことがわかりました。受け付けられなかった理由はわかったんだけど、それを宿泊者に連絡する体制ができていないと感じました。
ホテル側としても、日本の予約サイトと比べて宿泊客ニーズの変更に対して融通が利かなくて困るという話を聞きます。
こういう大規模予約サイトは、インターネット上の使い勝手のよさで拡大してきたので、システムに不備が出てくるようじゃだめですね。それともホテル側をいじめても利用者が減るわけじゃないと高をくくっているか。
編集後記
財政的に問題ないんでしたら、とりあえず遅延になっている分だけでも処理しちゃえばいいのにって思うのですが、そう簡単なことでもないんですかね。
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