ひとつの「時代」が終わろうとしている。2000年代から2010年代にかけて、インターネット上のコミュニケーションに革新をもたらしたSkypeが、5月5日をもってその歴史に幕を下ろす。2004年の正式リリースから21年。かつては世界中で同時に7000万人以上が利用していたが、近年はZoomなどの新興サービスに押され、次第に影を潜めていった。Skypeがその存在感を失った背景には何があったのだろうか。
2003年、スウェーデンとデンマークの起業家たちによって誕生したSkypeは、インターネットを利用してユーザー同士が「無料」で音声通話を行える画期的なサービスとして一気に注目を集めた。2005年にはアメリカの大手EC企業・イーベイに買収され、さらにビデオ通話機能の追加によって利用者を拡大。2011年にはマイクロソフトが85億ドルを投じてSkypeを傘下に収めた。
ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは、Skypeの誕生と普及を次のように振り返る。
「まさにコミュニケーションの革命でした。海外にいても、不便な国際電話ではなくパソコンとインターネットを使って、こんなにも自由に顔を見て、話すことができる。その解放感が人気を集めた最大のポイントです」
筆者自身もSkypeに助けられてきた一人だ。2010年から2012年まで中央アジアのウズベキスタン共和国に滞在していた当時、スマートフォンは普及しておらず、自宅のインターネット環境も不安定だった。数週間に一度ネットカフェに赴き、Skypeを通じて家族や友人と顔を見ながら会話することが何よりの楽しみだった。すでに他のビデオ通話ツールも登場していたものの、当時の連絡手段といえば、間違いなくSkype一択だった。それは筆者だけでなく、現地のウズベキスタン人にとっても同様で、多くが出稼ぎ中の家族や恋人とSkypeで繋がっていた。同僚の一人などは、勤務中にも毎日のようにウクライナにいる恋人とSkypeで会話していたほどだ。
だが、Skypeはその後も圧倒的なシェアを保ち続けることができなかった。高橋さんによると、転機となった出来事が2つあったという。
ひとつは、スマートフォン時代への対応が遅れたことだ。2010年には日本国内のスマホ普及率は4％だったが、2015年には50％を超えるまでに急伸。それと歩調を合わせるように、LINEなどスマホに最適化されたアプリが台頭し、ユーザーの心を掴んでいった。海外でも、WhatsAppや中国のWeChatといったモバイル向けアプリが急成長を遂げていったのである。
Zoomに比べて煩雑な手順が必要
「スマホが広まり、モバイルでの使い勝手が何より求められる時代になるなかで、Skypeはパソコン用の設計から抜け出せませんでした。その時代に大勢のユーザーが流れてしまったのが最初の失敗だったと思います」
その後、2020年から新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ビデオ通話を活用したオンライン会議が一気に社会に浸透。かつてのようにSkypeが再び脚光を浴びるかと思われたが、結果は違っていた。
2023年にクリエイティブバンクが運営する「デジタル化の窓口」が実施した「アフターコロナ時代のWEB会議システム」に関する調査によると、組織内で主に使われているWEB会議ツールは、Zoomが41.7％で最多。次いでMicrosoft Teamsが34.7％、Google Meetが9.3％となり、Skypeはわずか3.6％という結果だった。高橋さんはその理由を次のように指摘する。
「例えばZoomは、URLを共有すればログイン不要、ワンクリックで参加できるなど新しい相手ともストレスなくミーティングを始められる手軽さを売りにシェアを広げました。一方、Skypeはまずアカウントにログインし、相手のアカウントとつながって……という煩雑な手順が必要だと思われたことが影響したと推測されます」
実際にはSkypeにもアカウント不要で会議に参加できる機能が備わっているが、かつての印象が根強く残り、その認識を覆すことができなかった。Zoomが急速に広まり、TeamsやGoogle Meetがそれに続いた一方で、Skypeは選ばれることがほとんどなかった。筆者自身も、2020年以降、数百回に及ぶオンライン取材や会議に参加してきたが、Skypeを使った経験は一度もない。利用を求められたことすらなく、3.6％というシェアでさえ、体感としては多すぎると感じるほどだ。高橋さんはさらにこう続ける。
「従来使っていた組織で、そのまま使い続けたケースが多いのではないでしょうか。私も仕事柄ビデオ通話は毎日のようにしますが、ここ9年ほどSkypeの利用を求められたことは一度もありません。数年前にはアプリも消してしまいました」
マイクロソフトはTeamsに注力
Skypeを運営するマイクロソフトは、現在、社内向けコミュニケーションツールとして「Teams」に重点を置いている。高橋さんは、同じ企業内での競合サービスが存在していたことが、今回のサービス終了という決断に至った要因の一つだと分析している。
Skypeの終了に対して、感慨を抱く人も少なくない。アメリカ在住の40代の女性は、こう語る。
「Skypeにはいろいろな思い出があります。大学時代に留学生の夫と出会い、夫が帰国したあとは毎日Skypeで通話していました。私がアメリカに来てからも、家族や友人とつないでたわいもない会話をすることが本当に楽しかった。いつからか使わなくなってしまったけれど、人生を豊かにしてくれたひとつのツールだったし、今の生活もSkypeがあってこそだと思います」
Skypeは、今その幕を下ろそうとしている。しかし、その足跡と意義は、今後も語り継がれていくと高橋さんは語る。
「何もなかったところに市場を開拓し、新たなコミュニケーションの形をつくったSkypeは素晴らしいサービスでした。先駆者であり開拓者だったSkypeの記憶はこれからも残ると思いますし、今使われているアプリもSkypeの土台があったからこそ。魂はいろいろなサービスに引き継がれていると思います」
多くの人に惜しまれながらも、Skypeはその役目を終えようとしている。
専門家の反応は？
登場は2003年、通信回線がADSLやFTTHへと高速化するなか、電話と違って無料でP2PのIP音声通話やビデオ通話を利用できることに加えて、安く国内電話・国際電話をかけられる点も注目されました。2011年の東日本大震災でも、海外の方の連絡手段として案内した覚えがあります。
マイクロソフトとの関係で見ると、00年代はWindows Live メッセンジャーも使われましたが、2011年にSkypeを買収しこちらを展開します。2016年からはビジネスメッセンジャーとしてTeamsの開発を進め、現在はコロナ禍のビデオ会議需要もありSkypeの移行先としてTeamsに一本化しています。
一方で個人向けは、スマホの時代に入り結果的に日本だとLINE、他の国でも同様の機能を持つ様々なアプリが高いシェアを確保。Skypeも早期にアプリを展開しましたが、そこまでのシェアを確保できませんでした。
ネットの反応は？
久々にわかりやすくていい記事だったな。
Skype私も昔は使っていたけどやっぱりログインと相手のアカウントとつながらないといけないのは面倒だった。zoomはURLひとつだし「確かに」と思った。
いままでSkypeを使っていた音声接続サービスとかは全部切り替えないといけないから大変な部分もあるだろうけど、時代の流れだから仕方ない。
これまでお疲れ様でした、と言いたいですね。
ちょうどコロナ自粛の年に、Microsoft は SkypeサービスのTeamsへの統合を表明してましたね。
コロナ対策で原則テレワーク推奨になり、Skypeでの会議に慣れた頃に、Microsoft がSkypeを辞めると発表し、戸惑いながらTeamsに移行し直したのを覚えています。
ということで、 Skypeは消えた訳ではなく、その仕組みはTeamsに吸収されたと考える方が妥当と思います。
Skypeを吸収した頃のTeamsの通話画面は、Skypeそっくりで、何が違うのか良く分からず、「移行する価値あるのか？」と、文句を言う社員もいましたね。
SkypeはMicrosoft傘下に入ってから進歩が無かったように感じます。 Microsoftはteamsもありますし、ノウハウはそちらに吸い上げられ、役割は終えたのだと感じますね。
Zoomはコロナ禍で覇権を獲りましたが、その後、特にビジネス分野ではセキュリティ性の高いteamsが幅を利かせている印象です。 どちらかというと、コロナ禍で優位にあったはずのZoomがその後伸びず、Teamsに喰われている印象すらあります。
Skypeが消えるのは時代ですが、それでもストリーミング配信が始まった当時、Skypeを使ったコラボなどで配信を盛り上げるツールとして非常に存在感がありました。 そういう意味で当時は重要なツールでした。
編集後記
skype使ってたなぁ、最近も使ってたら急にteamsにしなくちゃいけなくなったけど。
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