「静かな退職」が広がりつつある。これは、仕事に対して情熱を持たず、必要最低限の業務だけを行う働き方を指す言葉だが、現在では60%がこの「静かな退職」を実践していると言われている。
社会人3年目のえりさん(20代)も、
えりさん
(20代)
仕事はできるだけサボった方が勝ち。頑張ったとしても給料は変わらない
との考えを持つ。新入社員の頃から「パソコンを打っている風」や「作業している風」を装っていたという。
そんなえりさんは、入社して数カ月で休職届を提出し、現在も休職中だ。体調に問題はないものの、
えりさん
(20代)
病院で“適応障害”の診断書をもらって提出し、今は会社に全く行っていないが給料の8割をもらっている。『会社側が原因で病気にさせた』ことになっている。働かないでお金がもらえてラッキーだ
と語る。
えりさんは「会社は簡単に解雇できない」と話すが、実際、企業が社員を解雇するのは難しい。労働基準法第16条では「客観的に合理的な理由」が条件とされており、全く働く意欲のない社員であっても解雇は容易ではない。このように、入社後に解雇が難しい状況では、採用の段階での見極めが重要だ。『ABEMA Prime』では、「採用してはいけない人の見極め方」について考察している。
「どうしても働きたくない」さん(20代・事務職)
えりさんと同様に「静かな退職」を実践している20代の事務職、「どうしても働きたくない」さんは、その理由の一つに「頑張っても給料は変わらない」ことを挙げている。上司から叱責されても「できないものはできない」と割り切っており、むしろ余計な仕事が回ってこなくてラッキーだと感じている。また、解雇規制があるため、「どうせ会社も簡単にクビにできない」と考えている。「能力不足」や「やる気がない」ことを理由に解雇すると、企業側が不利になるためだ。
このような考えに至った背景には、「残業が多いのに、給料がもらえないサービス残業になる」現実がある。
会社全体でも、仕事を抱えがちな人が多く、定時を過ぎても皆残っていて帰りづらい。スキルアップして給料を上げようとしても、給料も変わらない
と感じている。
それでも会社に留まっている理由は何か。
転職も考えたことがあるが、自分の適性がわからなかった。入社5年目で、仕事のやり方もわかっているため、新しく始めるよりもいい。未知の会社へ行く怖さもあって、なかなか踏み出せない
と語った。
元々は「プライベートと仕事が両立できる働き方」が理想だったが、「拘束時間が長くなり、プライベートとの両立が難しくなったことで、仕事へのモチベーションが下がった」と振り返り、
プライベートは、友達や家族との時間だけでなく、金銭面も重要になる。お金も時間も満たされて、初めて充実する
との考えを述べた。
社員をクビにできず悩む社長
美容サロンの社長である山木彰氏は、やる気のない若手社員を解雇できずに頭を抱えている。「店の方針を無視し、同僚との間で頻繁にトラブルを起こす社員」や、「コミュニケーションを取ろうとせず、あいさつも報連相もできない社員」、「店の電話に出ないため、お客さんからの印象が悪く、勤務態度も問題のある社員」がいるという。
さらに、社内には「人間性に問題のある社員」もおり、「コミュニケーションが苦手で、客やスタッフにあいさつができず、目を合わせて話すこともできないなど、基本的なことすらできない場合がある」と山木氏はこぼす。
山木氏は3年前に独立し、「Atria inc.」の社長となった。現在、川崎や横浜を中心にグループとして10店舗(うち直営6店舗)を展開しており、各店舗には最大で10名ほどのスタッフを配置している。全体で約50人を雇用しており、そのうち半数が正社員だ。
問題のある社員を採用段階で見抜けなかった背景には、初期の「人手不足」があったと山木氏は振り返る。「中小企業であることもあり、『とにかく稼げる人材を』と急いで求人を出し、十分に精査しなかった」との反省があるという。現在では、しっかりとした採用の仕組みを整えているが、やる気のない社員に対して様々な対策を試してきたものの、「効果的な解決策は見つかっていない」とし、「一時的に改善しても、本質的な部分は変わらない」と述べている。
ネット掲示板「2ちゃんねる」の創設者であるひろゆき氏は、社内規定に減給などのペナルティーを組み込むべきだと提言しており、
あいさつが、ルールではなくマナーになってしまうと、『そこまで悪いことではない』と認識される。業務上のルールとして定め、『守れないならペナルティー』としない限り、クビにできないのは当然だ
との見解を示した。
面接における魔法の質問
企業の採用事情に詳しいキャリアカウンセラーの中谷充宏氏は、「面接だけで見抜くのは難しい」という前提がある中で、採用面接で使える「魔法の質問」が3つあると語っている。
まず1つ目は、「良かれと思ってした行動で、周りに迷惑をかけた経験はありますか?」という質問
「経験だけを聞くのではなく、その行動に至った要因を掘り下げることで、その人の人格や行動特性が見えてくる」と説明している。
続いて2つ目は、「人間関係で不平・不満に思ったことはありませんか?」という質問
「人間関係に不満を持った経験は誰にでもあるはずで、これも要因を掘り下げることで、その人が会社にフィットするかどうかを見極めることができる」と述べている。
そして3つ目は、「周りからどういう人と思われることが多いですか?」という質問
「自己分析だけでなく、周囲からの評価やそれに対する自己認識をしっかり聞くことで、パーソナリティーとの相性や面接全体の一貫性を確認できる」としている。
企業や職種によって違いはあるものの、採用時に見抜くべき共通のポイントがあるという。それは「人や環境のせいにする傾向があるかどうか」だ。組織の目標達成を妨げるリスク要因となり、「会社が悪い」として問題社員になる可能性があると中谷氏は指摘する。「組織や事業は、同じ方向に向かって進むメンバーを集めるべきで、それに逆行する人は危険因子であり、他責的な傾向が見られる」と説明している。
また、良い人材を採用するためには、「同業種・同業界・同職種・同地域の賃金水準をある程度維持しないと人が集まらない」という点が基本だと指摘。その上で、「企業として『これを大切にしている』『これは許されない』という価値観を明確にし、応募者に伝えることが重要で、そうしないとミスマッチが生じてしまう」と述べている。
Limerence AI代表の平田茉莉花氏は、
平田茉莉花氏
スキルを持っているミドルエイジを採用しても、『俺すごいから』と何もしないことが結構ある。最初は業務委託から仕事を振り、『会社のビジョンと共感してくれる』となれば、ベースメンバーとして正社員に、役員に登用するのに尽きる
と主張している。
専門家の反応は?
「静かな退職」(Quiet Quitting)という概念は、アメリカのティックトッカーによって拡散された独特の概念だ。現在では世界中のZ世代で使われるようになった。まるで退職したかのように最低限の仕事をこなす働き方を指す。
つまり「今・ここ・自分」にしか焦点を合わせていない働き方と言える。社会人とは「社会に貢献する人」と私は教えられた。もっと視座を上げて、未来のために、そしてここではない他者や社会のために働くことが「社会人」の責務であり、そうしてはじめて報酬を得られる、と考えたほうがいいだろう。
ちなみに「給料分」とは何を指しているのか?会社が一人雇用した時にかかるコスト全体を指しているのだろうか?この「給料分」の定義が会社側と合っていなければ、かなり利己的だ。もっと大人たちによる啓蒙活動が必要ではないかと考えるが、どうだろう。
(コスト=経済的コスト/時間的コスト/精神的コスト)
採用の問題ではなく処遇制度の問題として考えられるべきだ。そもそも、モチベーションを上げるために、日本企業では職能資格制度が普及してきた。これは単なる年功賃金ではなく、労働者の能力と企業への貢献度を評価することで昇給していく。また、その昇給のカーブは「出世」(職能資格の上昇)に伴うため、大きな格差がつく。こうして、「能力の向上+企業への貢献+競争」が日本企業の人事戦略の核心となり、日本の労働モチベーションは世界的にも高いものとなってきた。 ところがその後、「人件費抑制」を狙いとした成果主義人事改革でこの構図は崩れていった。とりわけ「ブラック企業」と呼ばれる企業では、どれだけ貢献しても賃金が上がらず使い捨てられることが横行した。つまり、制度的なインセンティブが不在の中で、貢献だけが過大に求められてきたのだ。さらにいえば、そうした企業では若者の離職を「採用」の問題に転嫁してきたことも指摘できる。
ギャラップの2023年の調査では日本の従業員の72%が“静かな退職”状態でした。この調査では12の質問の回答結果から、従業員を「エンゲージしている」「エンゲージしていない」「全くエンゲージしていない」の3つに分類します。“静かな退職”は「エンゲージしていない」に該当します。上司に反抗したりせず問題ないように見えるから“静かな“と表現されるのです。
記事で言及している「店の方針を無視し、同僚と頻繁にトラブルになる社員」や顧客への態度が悪い社員は組織への敵対心を隠しておらず、「全くエンゲージしていない」に分類されるでしょう。「会社側が原因で病気」と主張する”えりさん”もこちらに近いです。こういう人たちをどう見抜くかは確かに重要でしょう。一方“静かな退職“状態の人は、最初はやる気があったのに努力が報われない経験を経て気持ちが離れていく人が多いようです。そのような結果を防ぐ会社側の対応が必要です。
ネットの反応は?
氷河期世代のおっちゃんからすると今の売り手市場で給料が上がらないからと怠けている時間はなんと勿体ないと思う。今の会社が給料が上がらずサービス残業があるなら、ちゃんとした会社に転職すればいいだけだと思っちゃう。氷河期時代はハズレしかないクジを引かされ続けてきたからね。
入社数か月で休職届を出し、8割の給料をもらっている。
入社したてだったら給料なんてたかが知れている。
当然ボーナスは出ないし出ても雀の涙。
23歳かそこらでそんな飼い殺し(会社にとっては寄生)状態で生きていて何が楽しいのだろうか。
休職期間は無限ではないしそれを過ぎたら解雇になる。
人手不足や賃上げが騒がれてるうちに転職して真面目に収入アップを目指すほうが長い人生、プラスに思える。
編集後記
こんな売り手市場の世の中で不満のある会社に居続けるなんてもったいないと思っちゃうんですが、そういう事でもないんですかね。
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