新年度が始まって約2か月。会社に代わって退職の意思を伝える「退職代行サービス」を利用する新入社員が増えています。中には、6年前に比べて月の利用件数が約4倍に増えた業者もあります。その背景には、若者の転職に対する意識の変化や、人手不足による企業側の強引な引き留めがあるとされています。
退職代行の利用者4倍「毎日のように」
(22)
辞めると言えば、勤め先も良い顔はしないだろう。言いづらくて代行に依頼した
保育士の女性(22)は、大阪市北区の「フォーゲル総合法律事務所」の退職代行サービスを利用した理由を話します。
この女性は大学を卒業後、4月から関東地方の保育園で働き始めました。しかし、就職前には説明がなかった教材費や制服費などの2万円が徴収され、上司には
できて当たり前の仕事。そろそろ覚えてもらわないと困る
と何度も注意されました。不信感が募り退職を考えましたが、言い出せずにいました。
メディアを通じて同事務所を知り、LINE(ライン)で連絡を取り、勤め先や退職理由など約50項目をメールで送りました。依頼を受けた事務所は今月初旬、退職届を作成し、勤務先にメールで提出しました。
女性は
(22)
勤務先とのやりとりを負担に感じていたが、一切なく安心できた。私のように退職を言いづらく、利用したいと感じている人は多いのでは
と話しています。
同事務所によると、月の利用は400件で、サービスを始めた2018年頃の約4倍に上り、利用者の約2割が新卒者です。料金は約3万~5万円。同事務所の嵩原(たけはら)安三郎代表弁護士は
代表弁護士
4月以降、毎日のように新卒者の依頼が来ている
と話します。
退職代行サービスは元々、業務の一つとして行う弁護士もいましたが、2010年代後半から専門的に行う「退職代行会社」が現れました。
東京都の「EXIT(イグジット)」もその一つで、2017年から事業をスタートしました。利用は年々増え、今年のゴールデンウィーク前後の利用は昨年よりも5割増だといいます。
同社によると、利用する理由として、上司からのパワハラなど対人関係に問題を抱えている場合や、事前に聞いていた業務内容や賃金、労働時間の条件が実際と違っていたというケースが多いといいます。
利用者は新卒者だけでなく、若い年代が多いです。同社が昨年1~3月に実施したアンケートでは、利用者のうち20歳代は約7割、30歳代が約2割でした。
同社の新野俊幸社長は
SNSで自社と他社の待遇を比較しやすくなり、違和感があれば、転職を考える意識が広がっている。退職のハードルが下がっていると感じる
と語ります。
人手不足理由に慰留
利用増の背景には、若者の転職意識の変化に加えて、企業の人手不足もあります。
厚生労働省によると、22年度に全国の労働基準監督署などに寄せられた「自己都合退職」に関する相談件数は4万2694件で、10年前の1.4倍に達しています。「退職を申し出ても人手不足を理由に慰留される」「退職届の受理を拒まれる」といった声が寄せられています。
フォーゲル総合法律事務所では、利用者の約7割が「辞めたいのに辞めさせてもらえない」という理由でサービスを利用しています。同事務所の担当者は、「人手不足が一因となり、特に新しい人材を雇う余裕がない企業で引き留めが行われている」と指摘しています。
組織的に『黄信号』、風土や人間関係見直しを
東京都立大学大学院の西村孝史准教授(人的資源管理論)の話によると、
西村孝史准教授
若者の間では、一つの会社に長く勤めても報われないとの考えや将来の不安から、入社前のイメージと実際の業務にギャップを感じれば、退職を意識する傾向がある。企業にとっては、退職代行を依頼する人が出てきたら組織的には『黄信号』とも言え、風土や人間関係に問題がないかチェックする必要がある
と述べています。
退職代行サービスで追加料金や音信不通などトラブルも
退職代行サービスを巡っては、トラブルも発生しています。
専門業者などで構成される日本退職代行協会(東京都)によると、協会発足後の2020年2月から今年5月10日までに、103件の苦情や被害相談が寄せられました。業者から事前に説明がなかった追加料金を請求されたり、依頼料を支払ったのに業者と連絡が取れなくなったりするケースがあったということです。
弁護士法では、弁護士以外が報酬目的で法律事務を扱うこと(非弁行為)を禁じています。そのため、会社から研修費の返還などを請求された場合、退職代行業者は代理人として対応することができません。しかし、退職の申し出を受けた企業から「弁護士資格を持たない業者から賠償請求を受けた」との苦情が寄せられることもあったということです。
専門家の反応は?
退職代行がメディアで話題になったのは、2010年代後半だ。やはり、その頃も空前の売り手市場だった。「売り手市場で退職代行」という言葉が何を意味するか、ピンときた人もいるだろう。そう、売り手市場になると、一般論として採用は困難になるし、転職する人も増え、つまり離職者も増えるのである。
ゆえに、企業の慰留も激しくなる。いや、「慰留」という言葉の漢字のニュアンスを超えるような強引な引き止めが行われるようになる。中には転職先に対して情報を流し、ネガティブキャンペーンを始めるなどする企業もある。心理学的アプローチを活用し、辞められないように口説き落とす企業もある。このような「退職妨害」はブラック企業が社会問題となった2010年前後にも話題となった。
労働者には辞める権利がある。職業選択の自由がある。退職代行サービスなど必要のない労働社会をつくりたい。辞めても戻ってこれる回転扉的発想も必要だ。
ネットの反応は?
ある意味良い時代になったのかもしれないです
今までは企業が有利だからと入社してから厳しいことを言っていました
求人票と違うことなど当たり前という経営者もいましたし
でも最初にきちんと言わないとすぐに辞められるということがわかるようになりましたからね
以前社労士さんと話をしたことがありますが、入社前に言わないことで社員とトラブルになることは多いそうです
入社前にきちんと全部提示することが大事だと言ってました
でも現実には入社させればこっちのものと言わんばかりに社員の騙してきましたからね
ここで会社も変わる必要があります
これ、次の就職先にも大いに影響あるよね。うちの会社、中途採用職員が内定していたが、前の会社辞めさせてもらえず採用がなくなったことがある。同業者だし結構、組織の枠組みに入れ込んでいたから、就職の数日前に連絡いただいたときはショックだった。あとで、その会社の人に聞いたら、その子が次の会社に就職できないようにシフトをめちゃ入れこんで準備させないようにしていたとこのこと。無理やりでも辞めさせない環境を整えるってどうなの。
編集後記
退職代行を使った側の記事が多いのでそろそろ退職代行を使われた側の記事が出てきそうだなぁ
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