アメリカ政府は、人工知能(AI)がもたらす新たなリスクに対処するための計画を発表しました。この計画では、責任あるAIイノベーションを推進するために、全米科学財団(NSF)から1億4000万ドル(約190億円)を出資して、7つの国立AI研究機関を新たに設立することが明らかにされています。
さらに、人々の権利と安全を守るためのAI技術利用に関する方針案を公開し、パブリックコメントを受け付けることも発表されています。
AIリスクに対処する取り組みでGoogleやMicrosoftら主要企業と協議
世界の主要なAI企業であるGoogle(グーグル)、Microsoft(マイクロソフト)、OpenAI(オープンAI)、Stability AI(スタビリティAI)、NVIDIA(エヌビディア)、Hugging Face(ハギング・フェイス)、Anthropic(アンソロピック)は、政府が導入する規制に準拠するために自社のAIシステムを公開し、それに基づく評価を受けることに同意しました。
この動きに対して、カマラ・ハリス副大統領ら高官はグーグルの親会社Alphabet(アルファベット)、アンソロピック、マイクロソフト、オープンAIの最高経営責任者(CEO)と会合を開き、AI技術によるリスクに対処する取り組みについて協議する予定です。米政権は、これらの4社を「AIイノベーションの最前線にいる4つの米国企業」と位置付けています。
英経済紙フィナンシャル・タイムズは、この会合が4社の責任や技術の安全性を確保するための「率直な話し合い」になる予定であると報じています。
また、米政府は、「サイバーセキュリティ、バイオセキュリティ、安全性」の分野においてAIが生み出す潜在的な国家安全保障上の懸念について、国家安保機関のサイバーセキュリティ専門家を巻き込んだ取り組みを実施することを表明しています。
AI技術による影響懸念
AI技術の急速な発展に伴い、人々やその仕事、安全に与える影響についての懸念が高まっています。最近、AIのゴッドファーザーとして知られるジェフリー・ヒントンがグーグルからの退社を発表し、AI技術が悪用されるリスクについて警告しました。ヒントンはBBCのインタビューで、現在のAIチャットボットの現状は「非常に恐ろしい」と表現し、AIの知能が人間を超える日がすぐにやってくる可能性があることを示唆しました。
また、3月下旬には、イーロン・マスクをはじめとする数百人の技術者、経営者、学者が、AI技術に関連するリスクをより深く理解するためにAI開発の「即時停止」を求める請願書に署名しています。AIの技術革新は人類に多くの利益をもたらす一方、悪用すれば深刻な問題を引き起こすこともあることを認識し、AIの開発と使用には慎重なアプローチが必要とされています。
ニュース用語説明
NVIDIA(エヌビディア)
NVIDIA(エヌビディア)は、グラフィックスカード、システムオンチップ、人工知能(AI)のコンピューティングソリューションなどの製品を開発・販売しているアメリカのテクノロジー企業です。主にゲーム、プロフェッショナルビジュアルコンピューティング、データセンター、自動運転車、AIなどの分野で活躍しており、世界中の企業や研究機関から高い評価を受けています。
また、AI分野では自社GPUを中心に深層学習のプラットフォームやソフトウェアを提供することで、急速に発展するAI分野においてリーディングカンパニーの地位を占めています。
Anthropic(アンソロピック)
Anthropic(アンソロピック)は、AI技術を活用して人類の最大の問題に取り組む企業です。同社の目的は、より良い未来を創り出すために、AIを用いて複雑な問題を解決することです。そのために、Anthropicは、AIを使って、エネルギーや環境、医療など、多岐にわたる分野での問題解決に取り組んでいます。同社の研究チームは、AIの進歩を加速させることで、より良い未来を実現するための研究開発を行っています。
ネットの反応は?
ここ最近のAIの進歩は加速度的になっていて驚くしかない。
特に最近衝撃的だったのが動画生成AIの性能が想像以上に進んでいる事。 まだまだ不自然な仕上がりで現時点では実用には難しいが、イラスト生成AIもつい一年前までは同じように「まだまだこれから」と言われていた。 ところが今では苦手だった手の描写も上手くこなせるようになり、既にイラストレーターの仕事が奪われているとの報告もある。
ここから考えると動画生成AIもどれだけ遅くとも10年後には実用化されているだろうし、カメラマンや俳優がいなくても思い描いた映像を制作できる革新的な世の中になっていると思う。
今人類は産業革命に匹敵する大変革に直面しているのだと、AIの進歩と性能を観るたびにひしひしと感じる。
リスクへの対処が規制の有無を考えることだけでなく、金を出して研究の役割を割り振ることまで含んでいるところが素晴らしいですね。
漠然と「みんなで考えましょう」などと呼びかけるよりも「あなたのところでやってください」と指名したほうが物事は進みます。
こういう決断をスピード感をもって下せるところが、どこかの国とはやはり違うのかなあと思ってしまいます。
編集後記
ネットの反応にあるとおり、AI技術に関するリスクを政府から積極的にスピード感をもって事を進めていこうとする姿勢がうらやましく思いますね。
それも自国の企業が開発を進めているだけに声もかけやすいというのもあると思いますが、、
コメント