2024年1月から9月までに「早期・希望退職」を募集した上場企業は46社に達し、前年同期の30社と比べて1.5倍増加しました。すでに2023年の年間(1月から12月)の41社を超えており、募集のペースが加速しています。対象となった人員も8,204人にのぼり、前年同期の2,066人と比べて約4倍に増加しており、上場企業による「早期退職」の動きが急速に進んでいます。
経営環境が金利上昇や為替の変動などでますます不透明になる中、業績が好調な企業では構造改革を急いでいる一方で、業績が思わしくない企業では事業の撤退などが進められています。これにより、2021年以来となる年間1万人を超える早期退職者が出る可能性が高まっています。
上場企業の区分では、東証プライム市場が32社(全体の69.5%)と約7割を占めました。また、黒字企業の中でも27社(全体の58.7%)が該当し、業績が好調な企業でも構造改革に伴い人員削減を進める例が目立ちます。
最近の事例では、リコーが1,000人規模の希望退職を募集し、構造改革の一環として固定費削減を目指しています。また、2023年には複数回の募集を行った企業が1社(ピクセラ)だったのに対し、2024年は9月末までに東北新社、ワコールホールディングス、ソニーグループの3社に増加しています。特に東北新社は今年に入り3度目の希望退職募集を発表しました。
2024年1月から9月までに早期・希望退職を募集した46社のうち、対象者の年齢が最も若かったのは30歳で、募集対象者の年齢層の若年化が進んでいることも注目されます。
業種別 電気機器が最多
2024年9月30日までに「早期・希望退職」を募集した上場企業は、46社に達しました。業種別では、リコーやカシオ計算機など複合機事業を展開する電気機器業界が11社で、前年同期の4社から増加し、最も多くなっています。
次いで、今年3度目の募集を行った東北新社などの情報・通信業が7社(前年同期と同数)、ワコールホールディングスが工場停止に伴い募集を実施した繊維製品業界が4社(前年同期2社)と続いています。
特別損失計上額の最高は200億円
国内外で「早期・希望退職募集」に伴う特別損失の計上額が判明した上場企業は17社あり、最も多かったのはコニカミノルタの200億円でした。次いで、資生堂が180億円、リコーが160億円、カシオ計算機が70億円、TOPPANホールディングスが61億3,200万円、オリンパスが28億円、ワコールホールディングスが22億円と続いています。
コニカミノルタは国内外で2,400人、資生堂は国内で1,500人、リコーは国内で1,000人の募集を行いました。
損益別 募集人数は黒字企業が約6割
「早期・希望退職募集」を実施した企業の直近の通期最終損益(単体)では、黒字企業が27社(全体の58.7%)、赤字企業が19社(同41.3%)となっており、黒字企業が約6割を占めています。
黒字企業による募集人数は6,646人で、全体の約8割(81.0%)に達しました。黒字企業27社のうち、23社が東証プライム市場に上場しています。
一方、赤字企業19社による募集人数は1,558人で、東証プライムが9社、グロース市場が5社、東証スタンダードが5社となっています。
専門家の反応は?
希望退職制度は日本のリストラのもっとも主要な手段とされてきた。雇用関係を終了する際に、法的には①企業側一方的に雇用契約を解約する「解雇」、②労働者が一方的に雇用契約を解約する「辞職」、③企業側が申し入れて行う合意解約(会社都合退職)、④労働者側が申し入れて行う合意解約(自己都合退職)の四つがあり、今回のようなリストラは③に該当する。ただし、会社都合退職の場合、労働者側が「合意」しなければリストラは成功しない。そのため、割増退職金の支給が必要になったり、本当はやめてほしくない人材が辞めてしまうといったことが起こる。 昨今話題の解雇規制の議論は、①の企業側からの一方的な雇用契約の解約を容易にし「費用」をかけずに、なおかつ「辞めさせたい人だけ辞めさせる」ことができるようにしようという話である。また、現在でも横行しているのは、「合意」に至るように、嫌がらせをする「退職強要」である。
早期退職については一見すると退職金が上乗せされてお得な選択肢のようですが、1年も無職期間が発生すれば割増退職金のほとんどが消えてしまいます(失業給付(雇用保険の求職者給付)も1年後には切れるでしょう)。求人はあるご時世ですから、「次」を早めに決めることが早期退職者は重要です。
一方で、早期退職を募るということは、人材不足で困っているはずの今、人員規模を縮小する必要があるということですから、「この会社にいても伸び代は小さいかも」と考え、会社を飛び出すことも一考です。「次」にいいチャンスがあれば、残留するよりキャリアアップの可能性があります。
いずれにしても人生の大きな分岐点です。早期退職の案内が来たら、よくよく検討してみてください。
ネットの反応は?
景気が良くて利上げしてるのに、早期退職を募集する企業が増えてるって、ちょっと不思議だよね。業績がいいなら、もっと人を活かして成長を目指しても良さそうなのに。昔、自分の職場でも「将来のために」って早期退職の話が出たことがあって、その時はちょっと寂しい気持ちになったのを思い出したよ。企業も色々と事情があるんだろうけど、できれば人を大事にしてほしいなって思うよ。
重要なニュースと思います。
ただ、業種だけでなく職種別のデータも欲しいと思いました。 対象年齢の引き下げ傾向は、新規事業等の休止等により専門スキル人材の流動性を高めることには寄与しそうです。
個人的には、高度な専門スキルを持った方は出来高制のような雇用形態をもっともっと進めた方が良いと思います。
まだまだ、日本では馴染まないですが皆さん、環境さえ整えば日本で働きたいと思っていると思いますよ。
編集後記
60歳超えても働かないと厳しい世の中で早期退職を募ったり、ん~って感じです。
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