人気のあるオンラインゲームで早く強くなりたいという願望が、ゲーム内のアイテムや通貨を実際のお金で交換する「リアルマネートレード(RMT)」につながっています。この取引は犯罪の温床になることがあり、捜査機関も注意を払っていますが、現在のところ明確な法的規制は存在しないため、対策が難しい状況です。また、最近ではマネーロンダリングの一環として利用されている可能性が指摘されています。
リネージュMでのRMT事情
「高レベルアカウントの不自然な増加が利用者の流出を招くかもしれない」と、多世代にわたり人気のオンラインゲーム「リネージュM」を手掛けるエヌシージャパン(東京都)の担当者が懸念を表しています。
このゲームは、架空の王国を舞台にしたストーリーで、王家の血を引く若者が仲間を集めて暴君から王位を取り戻すことを目指すロールプレイングゲームです。プレイヤーは敵を倒しながら装備を集め、時間をかけてキャラクターを成長させます。インターネットを通じて多くのプレイヤーが同時に参加し楽しむことができます。
リアルマネートレード(RMT)によりゲーム内通貨、レアアイテム、高レベルのアカウントを手に入れることで、短期間でトップレベルに達することが可能ですが、不正行為が広がると正規のプレイヤーの満足度が下がり、ゲームの寿命も短くなる恐れがあります。この問題を受けて、エヌシージャパンを含む複数のゲーム会社がRMTを規約で禁止しており、違反が発見された際にはアカウントの利用停止などの厳しい処置を取ることを警告しています。
RMT(リアルマネートレード)に関しては、取引を仲介するウェブサイトが存在し、特に人気のあるゲームでは、アカウントが最高100万円で取引されることもありますが、トラブルが頻発しています。
「購入したアカウントがゲームで使用できなかった」「アカウントを売ったが代金が支払われなかった」といった相談が国民生活センターに寄せられているとのことです。これらは警察によって電子計算機使用詐欺の疑いで摘発されることもありますが、それは氷山の一角に過ぎないと考えられます。
また、RMTが犯罪組織による資金洗浄の手段として利用されていることが、神奈川県警の捜査によって明らかになりました。
県警は7月に、「RMTDream」というリアルマネートレードの仲介サイトを通じて、リネージュMなどのロゴを無許可で使用し収益を上げたとして、サイトを管理する中国籍の男女3名を組織犯罪処罰法違反(犯罪収益等収受)の疑いで逮捕しました。県警によれば、このグループは他人のクレジットカード情報を使用してリネージュMのゲーム内通貨「ダイヤ」を大量購入し、それを仲介サイトを通じて低価格で販売し、2014年から2023年にかけて約26億円の売上を記録していました。得た収益は日本の食品や雑貨の購入に使い、これを中国へ輸出して現金化していたとされます。
匿名でやり取りできるRMTの仲介サイトは資金洗浄の格好の舞台だ
と警告する捜査幹部は、サイトが海外にサーバーを置いているため捜査が難しいと説明します。
ゲーム業界からは危機感が高まっており、エヌシージャパンの担当者は
詐欺の被害者だったゲーム利用者が、組織犯罪に加担してしまう恐れが出てきている。RMTを取り巻く状況が大きく変わった
と述べています。
法的な規制の欠如と取り締まりの困難さが課題である中、東京弁護士会所属の田中圭祐弁護士は
RMTは仲介サイトにとどまらず、SNS(ネット交流サービス)やフリーマーケットのサイトなどでも広く行われている。ゲーム会社による利用者への働きかけに限界があるのなら、法整備の必要性を検討すべきだ
と提言しています。
専門家の反応は?
リアルマネートレード(RMT)は、長年にわたっての懸念であり、複雑な問題です。
ゲームを知らない人からするとRMTの概念を理解することが大変です。オンラインゲームのキャラクター、ゲーム内のレアアイテムなどが高額取引されることに、驚かれるのではないでしょうか。
2000年代にRMTを扱う会社に取材をする機会がありました。当時は「ゲームを楽しみたい人の時間を肩代わりする」などの新ビジネスという触れ込みでした。運営するゲーム会社の規約に反している、許諾を得ていない点を聞くと、「法に触れてない」という苦しい答えでした。
記事のように法整備の検討をすべきという声があるのも理解できますが、具体的にどうするかが難問です。現実として規約禁止事項(RMT)に手を出す利用者がいるわけで、よく考えないと意味の薄いことになりそうです。そして犯罪の温床になるのは、ゲームに限ったことでないことも触れておきます。
RMTがはびこる原因は、オンラインゲームの設計に問題があるからです。 多くのオンラインゲームは月額課金で、長期間プレイして貰えるようゲーム内の貴重なアイテムの入手には膨大な時間がかかるように設計されています。
このため、忙しい社会人はプレイする時間がなく、欲しいアイテムや装備を入手できません。
一方、時間があるけどお金がない人はそうしたアイテムを代わりに入手して、現金で提供するという構図がRMTです。
もちろんこれ以外にも人件費の安い海外ユーザーが手を出したり、botを使用して稼いだり、不正に入手したりといった手法もありますが、規約での禁止だけでは撲滅は難しいと思われます。
時間を奪い合う現代社会、ゲームの設計自体の見直しが必要なのではないでしょうか。
ネットの反応は?
RMTってまだあるんですね。20年ぐらい前から既に問題になっていたと思いますが、未だに大した法規制もされていない事に驚きです。当時からMMOなどで中華の業者が跋扈していると聞いたことがあります。
日本はネット関係の法整備が本当に甘いですよね。違法ダウンロードみたいに、企業が騒がないとほったらかし。このままじゃ業者にやられたい放題なんで、政治家が詳しくないなら、専門家と協議の上で対策を検討した方が良いと思います。
RMTがゲームバランスを崩すっていうけど、今のMMOや育成要素を含むゲームは殆どが金を積んだもの勝ちだからな。リネージュMの前にあったリネージュシリーズも上位プレイヤーは1000万というリアルマネーを平気で課金していた。中ランクプレイヤーも毎月10~20万という金額は当たり前だった。 アイテムの取引とかは原則不可能になっており、RMTは盛んではなかったがとにかくゲーム側がお金を要求する仕様だったな。
編集後記
久々、RMTやリネージュってワードを聞いたなぁ
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