先週、約42万人の学生が国公立大学の第二段階の試験に挑戦した。その一方で、私立大学では早くも合格者の発表が行われている状況だ。
大学選びにあたり、受験生たちはどのような基準を重視しているのだろうか。Xでは、大学のブランドが人生を左右する」「目指すはMARCH以上だ!」という意見が見られる反面、「今時は何を学びたいかが大事だと思うけど」「とりあえず有名大選ぶって人多いよね」という声も聞かれる。
MARCHとは、明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学の頭文字から成る関東地方の有名私立大学群を指す言葉であり、学習院大学を加えてGMARCHとも呼ばれることがある。1980年代には、私立大学選びのトレンドを示す指標として用いられていた。最近では、上智、明治、青山学院、立教、東京理科大の5校を指すSMARTという言葉も登場している。
現在の私立大学のトレンドとは何か?そして、このようなラベリングは本当に必要なのだろうか。
MARCHはもう古い?SMARTとは?
難関私立大学に関するランキングや呼称について、専門の予備校「マナビズム」の八澤龍之介代表は、
八澤龍之介氏
序列が変化しているわけではない
MARCHグループ内の格差に言及している。
八澤龍之介氏
明治、青学、立教の3大学は難易度が上がってきている。また、早慶上理の中で、早慶と上理を一緒にするのはどうかという観点からSMARTが生まれた
と解説している。
明治、青学、立教の中でも、
八澤龍之介氏
特に明治大学は、試験科目や受験日程などの観点で早稲田大学と相性が良く、併願校として人気がある。そういった併願の相性の良さから人気が左右される
と見解を示した。
また、
八澤龍之介氏
所在地が都心に近いほど人気が高い傾向がある。中央大学の法学部は最近、茗荷谷にキャンパスを移転した。一昔前なら、早慶とW合格した場合に中大法学部を選ぶ人もいたが、近年は人気が下がっていた。しかし茗荷谷に移転してから中央の人気が復活している
とコメント。
タレント兼番組コメンテーターの山崎怜奈さんは、学生時代に慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパスへの通学に電車とバスを使用し、毎日の往復に2000円を費やしていたと語る。この経験を振り返り、
学費の問題もあるけど、通う距離の問題もある。すでに仕事をしていたので、仕事場の近くか大学の近くに住むかの選択を迫られた。立地の問題は大きい
と述べている。
大学のラベリングは予備校の戦略か?
山崎怜奈さんは
私は、ある先生の授業を受けるために慶大の環境情報学部に進学し、湘南藤沢キャンパスに通った。学校や学部によって特色があるのに、受験に失敗した場合、“GMARCHに入れなかった” “あの人は早慶レベルだ”といったレッテル貼りが起きてしまう。ラベリングがコンプレックスになる。学歴は重要ではない
とラベリングへの批判を展開した。
これに対し、「マナビズム」の八澤龍之介氏は、
八澤龍之介氏
学習院を入れることで合格者の総数が増える。GMARCHにGが入ったのは予備校の戦略だろう。関関同立も関西の有名予備校が、名称を作り持ち上げることで選ばれるようになった
と述べた。
「難関私大専門塾マナビズム」を運営する八澤氏は、関西進出時には
八澤龍之介氏
ウチは“難関私大専門塾マナビズム”という屋号だが、関西に出店するときは“関関同立専門塾マナビズム”と屋号を変えている。その括りがなくなった場合、ビジネスプランに影響する可能性もある
と述べた一方で
八澤龍之介氏
自分の学力でどの大学に進学すべきか考えたとき、どこが適切か、ラベリングされていないと選びにくい。子どもが選択しやすくなる
という見方も示している。
企業による“学歴フィルター”
YouTuberのあきぴで氏は、東京大学法学部の卒業生で、元々は国立大学である大阪大学に現役合格しながらも、東京大学への強い志望から1年間の浪人生活を経て入学した。彼のYouTubeチャンネルは35万人の登録者を抱え、「東大生あるある」や「進学校あるある」のコンテンツで人気を博している。
受験での競争心から東大を目指したあきぴで氏は、
あきぴで氏
サッカーや芸能界で競争するのと同じで、自分は受験で勝ちたかったから
と受験動機を語るも、東大生活については
あきぴで氏
楽しくなかった。合格した時が一番興奮した。あとは惰性で過ごした
と述懐している。
また、彼はその後の進路について
あきぴで氏
元々、俳優を目指して劇団に入っていたが、挫折して辞めてからYouTubeを始め、今も続けている。高学歴を活かして就職することも考えたが、それ以上に劇団に興味があった
と振り返っている。
これを受けジャーナリストの堀潤氏は
日本は欧米に比べて博士号取得者に対する評価が極めて低い。海外ではきちんと肩書きとして評価されるのに、日本では非常に安く買い叩かれている。高学歴を勝ち取った若い世代に“その先の未来はないだろう”と思わせてしまう日本社会もいけない
とし
せっかく頑張って東大に入ったのに、“達成感”で終わってしまうのは勿体無い
と述べた。
八澤氏は、
八澤龍之介氏
大企業となると人材採用の時に、一人ひとりを見ることができない。その際、偏差値が高い大学から選んで見ていきたいという考え。大企業になればなるほど、色濃く出てしまうのだろう
と分析している。
また、堀氏は
企業側も収入が減り、体力がない組織になれば、“即戦力が欲しい”となっていく。余力がある時と比べて採用コストがかけられなくなっているのが現状だ
と現在の採用環境を指摘し、
演算能力は鍛えられる。繰り返し訓練すればより早く計算できるようになる。公教育から積み上がっていく中で才能を伸ばせると。一方クリエイティビティは天賦の才能と言われる。そこに後天的に体験などが加わり、さらに能力を広げられるかどうかだ。このようにさまざまな指標がある中で、大学のラベリングで企業が人を選んでいるなら、この国は衰退する
との意見を展開している。
MARCH、GMARCH、SMART大学の偏差値をチャットGPTさんに聞いてみた
MARCH、GMARCH、SMARTと大学の序列が出てきましたが、それぞれの大学の平均の偏差値ってどのくらいですか?
偏差値は、大学入試の難易度や学生の学力水準を示す指標の一つで、大学や学部によっても異なります。また、偏差値は毎年変動することもあり、予備校や入試情報サイトによってもわずかに異なることがあります。しかし、一般的な傾向として、MARCH(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)、GMARCH(上記に学習院大学を加えたもの)、SMART(上智大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、東京理科大学)の各大学群の平均偏差値について概説します。
MARCH
- 明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学:これらの大学の偏差値はおおむね45から60の範囲内にあります。学部や学科によって大きな差があり、特に法学部や経済学部などの人気学部は偏差値が高めです。
GMARCH
- 学習院大学:学習院大学を加えたGMARCHに関しては、学習院大学も同様に偏差値が45から60の範囲に位置していますが、学部によって偏差値には幅があります。
SMART
- 上智大学、明治大学、青山学院大学、立教大学、東京理科大学:SMARTに含まれる大学の偏差値は、一般的に50以上で、中には65を超える学部もあります。特に上智大学や東京理科大学の理系学部は高偏差値で知られています。
これらの偏差値はあくまで目安であり、詳細な偏差値や最新の情報を知りたい場合は、各予備校や大学入試情報サイトを参照するのが良いでしょう。
専門家の反応は?
偏差値の序列化を未だ議論していること自体に大きな違和感があります。高卒者数が多く大学が少なかった受験戦争時代の1990年代から30年以上が経過し、18歳人口は半減、大学数は激増し、入試自体も大きく変わってきています。どの大学を出たかより、何を学び、何ができるかが求められる社会になり、今後AI化されていく中で、未だ偏差値で枠組みをラベリングする目的は、どこにあるのか、誰が得をするのかを見極めることが必要だと思います。
採用効率を高めたい企業、偏差値を高める入試改革・高い偏差値によって受験生を集める大学の生き残り戦略、受検対策一辺倒の塾、学校など、古典的な人材育成と企業方針は、ますます意味をなさなくなります。多くの人の心に刻まれた「良い大学=偏差値の高い大学」という亡霊がいなくなるには、多くの年数がかかるとはいえ、今後の社会を生きていく子供たちには、見せたくない亡霊ではないでしょうか?
採用の目で見ても、学生指導の目で見ても、大学名だけで就職はもちろん、人生がうまく行く訳ではありません。
高偏差値大学に入れれば(出るのは確実なので)、より有名企業に入りやすいだけです。
大企業ではありません。
今でも十二分に東証プライムクラスの企業も、B2Bなら入りやすくなっています。単に大学生のほとんどが企業を知らないため、CMなどで知名度の高い企業だけに集中しているから就活が厳しいのです。
高偏差値大学だから、誰でも有名企業に入れる訳では無いこと、受験生はわからなくとも、親は教えてあげてほしいですね。
ネットの反応は?
大学で新卒採用を決める基準にするのは間違ってないと思う。
単純に能力のない学生を引く確率は落とせると思う。 で
も学力はあってもコミュニケーションスキルがあるとは限らないからなぁ。
そこは面接官の腕の見せ所じゃないですかね。
逆に偏差値が低くてもコミュニケーションスキルが高ければ良い仕事をしてくれる可能性はある。
自分は高校より少し偏差値的には劣る大学に入学したが、一番違いを感じたのはエネルギーとか行動力の部分だ。
高校時代の友人は、「あれやろう!」ってなるとグイグイ話を進めていく人が多かった。
それは今でも同じ。
年末年始で飲みに行って、そこで話題に出たことがどんどん実現されていく。
大学だと、「あれをやろう!」と自分から言う人は少ないし、こちらが話を振っても面倒そうなリアクションをされることが多い。
とはいえ、そういう大学でも、結構有名高校から進学してきている人は少なからずいる。
そして、大抵の場合、地頭はいいけど勉強とか受験には興味がなかったという人が多い。
自分は狙ったわけではないけど、結果的にそういう人とつるんでいることが多かったと思う。
偏差値だけで人間の能力のすべてが分かるわけではないと思うけど、一定の指針にはなっているのではないかとも思われる。
MARCHのビリの学校出身です。 受験予備校のネタとはいえ偏差値で測られるとそれはまたひどいもんですよね。 正直、悔しいですよ。
でもね、ここで申し上げたいのは 「大学というのは、自分の希望する勉強と研究をするための機関である」ことと、 「学校の看板で選ばず、自分のやりたいこと」で学校を選ぶべきというこの二つです。 そして、我々OB、出身者(どこの学校かは問わない)は、自分の行動している姿を後ろから出身学校の後輩たちや世間様から見られている立場であるので、胸を張って堂々と働いてきちんと社会で活躍してやろうじゃないですか!
失敗したって上等、試行錯誤はなお上等!
今以上に全力で高みをめざして邁進する次第であります。
編集後記
受験に燃え尽きてしまって次につながらない生き方になってしまうのは悲しいですね。
いい大学に入るのが全てではないと思いますが、人生の選択肢は確実に広がると思いますね。
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